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漢方治療について

当院では、漢方を使った治療も行っております。

漢方薬についてs001med_119

当院では漢方薬を使った治療も行っております。
西洋医学による治療だけではなく、漢方医学(保険診療の漢方薬)による治療も積極的に行っております。両方をたずさえて、どちらかに偏らずに、患者様の病態・病期に応じて、早く確実に治せる方法を判断して選択することを心がけております。

最近では、1日2回服用のスティックタイプのものや錠剤も増えてきており、従来の漢方薬特有の「飲みにくさ」が軽減されてきています。

漢方治療のメリット

西洋医学か漢方医学のどちらか一方の医学に固執せず、両者併用で臨機応変に対応することで、症状の軽減、治療期間の短縮が期待できます。
西洋医学では比較的対応が難しい以下のような症状などは、漢方薬による治療がお勧めです。
 泌尿器科の症状:頻尿、残尿感、排尿時痛・排尿時違和感、骨盤痛、むくみ、冷え症、ほてり、神経痛など

費用について

当院の漢方薬はすべて漢方エキス製剤(ツムラ、クラシエ、コタロー)を使用しておりますので、保険診療が適応されます。患者様には、通常の保険診療と同じく、1~3割負担となりますのでご安心ください。西洋医学と漢方医学を併用した場合も、すべて保険診療の適応となります。

泌尿器症状の漢方治療s001med_041

 泌尿器科領域における種々の症状のなかで、漢方治療が有用なのは『尿路の不定愁訴』だといわれています。これらの特徴として、頻尿、尿漏れ、排尿痛、残尿感、下腹部痛、会陰部痛など多彩な症状があるにもかかわらず、いずれも器質的な障害を認めません。
 このようなとき、西洋医学では精神安定剤などが用いられますが、症状の改善が得られない場合は漢方治療が適します。漢方医学では、これら『尿路の不定愁訴』を一種の機能障害と解釈し、肩こり・イライラ・冷え・便秘など一見関係なさそうな全身症状も考慮して、適応する漢方薬を選択します。実際には『脾虚』や『腎虚』、『気』『血』『水』のいずれの異常かを判断することになりますが、原因がひとつではないことが多く、単一処方で効果が得られない場合にはいくつかの処方を併用することになります。

 泌尿器科領域において漢方薬を優先して用いるものには、尿路の不定愁訴である更年期後の頻尿、慢性膀胱炎、慢性前立腺炎などがあります。漢方薬を単独使用あるいは併用するものには、前立腺肥大症をはじめとする排尿障害や男性不妊症などがあります。その他、性機能障害、膀胱機能障害を含む尿失禁の一部も漢方の適応となります。男性不妊症には、補中益気湯などの補気剤が用いられます。その他、反復性膀胱炎の再発防止には猪苓湯類、尿路結石の排出促進には芍薬甘草湯と猪苓湯が併用されます。また、体外衝撃波結石破砕術で砂状になった結石の排出促進に猪苓湯合四物湯などが用いられます。

泌尿器科領域における漢方の適応
1)漢方薬の優先使用
 ・尿路不定愁訴(更年期後の頻尿、慢性膀胱炎、慢性前立腺炎)
2)漢方薬の単独使用あるいは漢方薬併用
 ・前立腺肥大症
 ・男性不妊症、性機能障害
 ・尿失禁
3)西洋薬との併用
 ・抗腫瘍化学療法による体力低下の防止
 ・ホルモン補充療法
 ・急性膀胱炎の再発防止
 ・尿路結石の排出促進

泌尿器科領域でよく用いられる漢方薬と、主な適応疾患

 猪苓湯(TJ‐40)    膀胱炎、尿路結石
 八味地黄丸(TJ‐7)  前立腺肥大症
 加味帰脾湯(TJ‐137) 不定愁訴
 五苓散(TJ‐17)     尿路の難治性炎症
 補中益気湯(TJ‐41)  男性不妊症
 柴苓湯(TJ‐114)      不定愁訴、腎疾患
 清心蓮子飲(TJ‐111) 尿路の不定愁訴
 人参湯(TJ‐32)    冷え症での頻尿
 芍薬甘草湯(TJ‐68)  尿路結石、痙攣性疾患

頻尿・尿もれとはs001med_011

 頻尿とは、排尿回数が増加すること、尿漏れとは排尿する前に尿がもれてしまったり、くしゃみなどおなかに力を入れたときに思わず尿が出てしまったりすることを言います。

 通常、私たちは日中に5〜8回トイレに行き、夜間にはほとんどトイレに行かないと言われています。頻尿とは、昼間や夜間の排尿回数が通常より多くなった状態で、原因は神経に問題がある場合(脳血管障害や脊髄損傷など)とない場合(水分の摂りすぎ、膀胱炎などの感染症、前立腺肥大、加齢、骨盤底筋・尿道括約筋の機能低下など)に分かれます。頻尿というのは一つの症状ですが、2002年の国際尿禁制学会では、尿意切迫感(抑えきれない尿意)をメインに、頻尿や夜間頻尿がある場合をまとめて「過活動膀胱(OAB)」として扱うようになりました。

過活動膀胱の症状

尿意切迫感 急に起こる、がまんできない尿意
昼間の頻尿 日中の頻尿(回数はとくに決められていない)
夜間の頻尿 トイレのために夜、1回以上起きる
切迫性尿失禁 抑えきれない尿意が起こると同時に、尿がもれてしまう

 一方、尿漏れは、自分の意志とは関係なく尿がもれてしまう現象で、尿失禁とも言います。原因によっていくつかのタイプに分かれますが、下記の表のほかにも薬の影響などによって尿漏れが起こる場合があります。ちなみに、女性に多いのは腹圧性尿失禁です。

尿もれのタイプ

腹圧性尿失禁 くしゃみや咳をした時、重い荷物を持った時など、おなかに力が入ったときに尿がもれる 骨盤底筋や尿道括約筋のゆるみ
切迫性尿失禁 尿意を催した途端にもれてしまう、あるいはトイレに間に合わずにもれてしまう 膀胱炎、尿路結石、過活動膀胱など
溢流性(いつ
りゅうせい)
尿失禁
膀胱から尿が出きらないで残ってしまい、尿意を感じないにも関わらず、尿がもれてしまう 前立腺肥大、膀胱瘤など

頻尿・尿もれの薬物治療、非薬物治療

 頻尿の治療は、感染症があるときは抗菌剤で感染を抑えます。また、排尿は自律神経のはたらきに支配されており、副交感神経から出るアセチルコリンという物質が関係しているため、この物質のはたらきを抑える薬「抗コリン薬」を用いて治療にあたることもあります。ただ、抗コリン薬は閉塞隅角緑内障の人には用いることができないうえ、のどの渇き、ふらつき、便秘などの副作用が5〜20%程度出現するという問題があります。また異常な膀胱収縮を抑えると同時に正常な膀胱の収縮を抑えてしまうことから、尿が出にくくなる尿閉という合併症も1%未満ですが、出現する可能性があります。
 尿漏れに対しても、抗コリン薬がよく用いられますが、頻尿と同じように閉塞隅角緑内障の人に対しては使用できず、副作用の注意が必要となります。尿漏れの抗コリン薬以外の治療法としては、β刺激薬などの内服薬、腹圧性尿失禁を予防する体操(骨盤底筋体操と呼ばれています)や、電気・磁気刺激療法、手術療法(TVT手術、TOT手術)などがあります。

漢方の治療s001med_018

 漢方の概念には、「気・血・水(き・けつ・すい)」というものがあります。「気」は生命エネルギー、「血」は血液とそのはたらき、「水」は血液以外の水分と考えられています。頻尿や尿漏れなどの排尿に関するトラブルは、この3要素のうちの「水」に異常をきたす「水毒・水滞」によって生じる症状です。

 さらに、こうした原因を作り出すのが、「水」の状態を調整している五臓六腑、「腎(じん)」です。腎といっても、腎臓というひとつの臓器だけを指すのではなく、排尿・排泄、水分代謝、ホルモンバランス、記憶力などを総合した機能を指します。腎の機能が衰える「腎虚(じんきょ)」という状態になると、「水」に関する異常が起こってくるわけですが、その一つの症状が排尿のトラブルです。 また、寒くなるとトイレが近くなるように、こうした排尿トラブルの根底には「冷え」があると捉えています。前述した腎虚も冷えによってもたらされることが多いことが分かっています。そのほか、「血」の滞りで生じる「瘀血」も腎虚に関わることがあります。

 漢方の治療では、こうした腎虚、水毒・水滞、瘀血など、排尿トラブルの背景にある原因を探り、これらを補正して、頻尿・尿漏れを改善していくことを目的にします。また、最近では細菌感染がないにもかかわらず、頻尿に下腹部の不快感、蓄尿時の痛み、残尿感(尿が残った感じがする)が合併する膀胱痛症候群/間質性膀胱炎という病気の存在が明らかになっていますが、漢方薬で下腹部の不快感や痛みなどを改善させることがあります。

頻尿・尿もれの治療で用いることが多い漢方薬

八味地黄丸 
(はちみじおうがん)
排尿困難、頻尿(体力中等度以下、疲れ易く、四肢が冷え易く、尿量減少または多尿)
牛車腎気丸 
(ごしゃじんきがん)
排尿困難、頻尿(体力中等度以下、疲れ易く、胃腸障害がなく、尿量減少または多尿)
猪苓湯 
(ちょれいとう)
排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿(体力に関わらず使用でき、排尿異常がある)
清心子飲 
(せいしんれんしいん)
残尿感、頻尿、排尿痛(体力中等度以下、胃腸が弱く、全身倦怠感がある)
小建中湯 
(しょうけんちゅうとう)
小児虚弱体質、小児夜尿症(体力虚弱、疲れやすく、頻尿および多尿)

 頻尿や尿漏れに使う西洋薬(抗コリン薬)の場合、副作用があり、薬が使えない患者さんもいるわけですが、こうした薬に取って代わる方法として、最近は、西洋医学からも漢方薬の効果が期待されるようになっています。

1. 頻尿

 漢方治療の対象になる頻尿は、心因性・機能性頻尿と前立腺肥大症などに伴う頻尿です。心因性あるいは機能性頻尿は西洋医学的には原因が把握できないもので、精神安定剤や抗コリン剤などを投与して経過を見ることが多いですが、完全に軽快することはあまり期待できません。

 八味地黄丸やこれに牛膝、車前子という生薬を加えて利尿作用を強化した牛車腎気丸などの補腎剤は、前立腺肥大症のように排尿がやや困難な例に有効です。これらの漢方薬は頻尿だけでなく、排尿困難や排尿痛などの排尿状態も改善します。前立腺肥大症がある場合には瘀血や血虚を伴いますので、桂枝茯苓丸 や四物湯の全量や半量を併用した方が良い場合があります。ただし、八味地黄丸や牛車腎気丸、四物湯には地黄が含まれており、胃腸障害を来すことがあるので注意を要します。

 主に高齢者で体力や免疫力が低下した患者さんでは、体力の増強を図るために補脾剤または補気剤を用います。補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯などがこれに相当します。

 桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、加味逍遙散、当帰芍薬散などを使用することもあり、加味逍遙散と当帰芍薬散は特に更年期障害に伴った頻尿に非常に有効といわれます。

 小柴胡湯、柴苓湯などの柴胡剤も有効で、ほかにいわゆる不定愁訴に清心蓮子飲、ごく軽い炎症に猪苓湯、猪苓湯合四物湯などを用います。

2. 尿失禁

 女性の主な尿失禁には、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、反射性尿失禁があります(表)。

 s001med_019腹圧性尿失禁は多産婦や高齢婦人に多く、咳やくしゃみなどで下腹部に力が入ったときに起こる尿漏れです。骨盤底筋群の弛緩が原因であることから、骨盤底筋群を強化する失禁体操を1日100回程度、2~3カ月行います。これで効果が不十分な場合は薬物療法を併用します。副作用で長期服用が難しい場合には漢方薬を用います。体力増強、骨盤底筋群増強作用を期待して補中益気湯、胃弱で神経質な例には清心蓮子飲などを投与します。体操療法や薬物療法が奏効しない場合には手術を行います。最近では手術療法も20~30分程度で終了し、治療効果も十分に得られます。
 切迫性尿失禁は、急激な尿意とともに生じる尿漏れで、脳疾患に伴うものと原因不明のものがあります。最近では、この尿意切迫感と頻尿がある場合を過活動膀胱と呼んでいます。切迫性尿失禁は膀胱内圧測定中に不随意に失禁が起こることが特徴でもあります。しばしば腹圧性尿失禁と併発することがありますが、切迫性尿失禁単独では手術の適応となりません。薬物療法としては抗コリン剤などが用いられますが、口渇などの副作用がある場合には漢方薬を使用します。猪苓湯合芍薬甘草湯は、膀胱炎などに有効な猪苓湯と抗痙攣作用のある芍薬甘草湯の合方です。特に芍薬が膀胱の不随意収縮に有効であり、尿失禁を抑える効果があります。半夏厚朴湯合八味地黄丸も用いることがあります。半夏厚朴湯はもともと喉のつかえ感を訴える神経質な例に有効とされ、八味地黄丸は前立腺肥大症のような下半身の機能障害を調える効果があります。なお、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁が併発している例では、それぞれに有効な漢方薬を組み合わせるとよいとされます。
 反射性尿失禁は、尿意がないのに、ある程度尿が膀胱に溜まると排尿運動が起こり、尿が漏れてしまうものです。脊髄損傷や脳障害後などで排尿の調節ができずに起こります。抗コリン剤や平滑筋弛緩剤などを用いますが、あまり効果がなく、自己導尿を行うことがあります。漢方薬もあまり有効ではありませんが、神経障害と腎虚があると考えて八味地黄丸や牛車腎気丸が用いられます。

  • 腹圧性尿失禁
    30歳以上の女性にとくに多く、咳やくしゃみのときに下腹部に腹圧がかかるため尿が漏れる状態で、骨盤底筋群の脆弱化が原因といわれています。骨盤底筋群の脆弱化は筋トーヌスの低下で漢方では「中気下陥」といい、補中益気湯が適応します。補中益気湯は内臓平滑筋や肛門括約筋の機能低下にも有効ですが、単独で改善が得られないときには補腎薬を併用します。
  • 切迫性尿失禁
    70代以降の高齢者に多く見られ、前触れもなく強い尿意とともに失禁する状態をいいます。脳出血などの脳疾患や脊髄疾患、前立腺肥大症などで排尿困難がある患者さんにみられる症状ですが、原因が不明の場合もあります。漢方では膀胱収縮を抑える目的で、猪苓湯合芍薬甘草湯や、腰の冷えの強い場合には苓姜朮甘湯を用います。前立腺肥大症などで下半身の衰えのあるような場合は、補腎薬を併用します。
  • 男性の尿失禁と漢方治療:男性の尿失禁は、前立腺肥大症の初期症状として現れる場合が多く、その治療は切迫性尿失禁に準じます。排尿障害改善薬としてα1交感神経遮断剤が有用ですが、頻尿に伴う尿失禁(過活動膀胱)には抗コリン剤が有効です。また、切迫性尿失禁に対する一連の漢方薬も使用されます。前立腺手術後の尿失禁に対しては、補中益気湯が有効な例も報告されています。

3. 反復性膀胱炎、慢性膀胱炎

 通常は急性膀胱炎に漢方薬は使用しませんが、再発を繰り返すような例では猪苓湯、猪苓湯合四物湯、牛車腎気丸などを用いることもあります。

 数日から10日程度の急性期を過ぎても排尿痛、残尿感、頻尿などが残っているもの、また全く自覚症状はないものの、検尿の沈渣で赤血球、白血球が高視野で5~6個以上認められるものを一般に慢性膀胱炎と呼びます。しかし厳密には、膀胱鏡検査で膀胱粘膜に濾胞性変化、偽膜性変化が認められるものが慢性膀胱炎とされます。また、尿所見には異常なく、自覚症状のみがある膀胱神経症を慢性膀胱炎に入れる場合もあります。

 膀胱結石、結核といった基礎疾患や便秘などがあれば、まずこれらを治療します。基礎疾患の関与が少ない慢性膀胱炎で、尿培養で有意な細菌数が検出される場合は、急性膀胱炎と同様の治療を行います。それでも治癒せずに長期化した場合は、間欠的抗生物質投与と消炎酵素剤、精神安定剤の投与がよく行われています。慢性膀胱炎に対する漢方治療では、利尿効果と消炎効果を期待して猪苓湯あるいは猪苓湯合四物湯が用いられます。検尿で軽度の血尿を示す例にはより有効ともいわれます。胃腸障害がある場合にも投与可能といわれますが、胃部不快感を訴える例があるので注意を要します。一方、尿路不定愁訴に用いられることもある猪苓湯合四物湯は、地黄による胃腸障害に注意する必要があります。清心蓮子飲は一般に下腹部の愁訴を改善する目的で使用されます。四君子湯がベースになっているので胃弱にもよいとされ、また血糖値を下げる効果もあり、糖尿病にも推奨されています。

 中年以降の女性に多く、冷えがあり免疫機能の低下している場合にみられます。この場合、冷え症の治療をしながら免疫力の向上を考え、下記の処方を併用します。

4. 尿路不定愁訴

 「西洋医学的検査では異常を認めないものの尿路の疾患を思わせる症状のあるもの、および尿路に疾患は認められるものの、その疾患特有の症状以外の症状を呈するもの」を尿路不定愁訴と呼びます。この尿路不定愁訴に該当するものに膀胱炎、尿道症候群、前
立腺炎があります。たとえ西洋医学的検査で異常を認めない場合でも、漢方薬を処方すると良い治療効果が得られることがあります。

 その代表的な処方が八味地黄丸牛車腎気丸です。牛車腎気丸は、八味地黄丸に牛膝、車前子を加えて利尿および鎮痛効果を増加させた処方です。腎虚を治す補腎剤でもあることから、白内障、腰痛、関節痛などの高齢者特有の症状にも有効とされます。

 膀胱炎に似た症状を示す不定愁訴として、更年期以降の女性によく見られる頻尿を主体とした膀胱炎様症状(尿道症候群)があります。女性ホルモンの減少で生じるものと考えられ、西洋医学的にはホルモン補充療法が行われることがあります。漢方治療では、冷え、のぼせのある例には加味逍遙散が極めて有効といわれます。さらに貧血気味であれば当帰芍薬散を用います。これらの処方は背景にある冷え症も改善し、ホルモン補充療法による有害作用も認められません。

5. 前立腺肥大症

 前立腺肥大症は腺腫の腫大により骨盤腔内の血流を障害するという考えがあり、これを漢方では瘀血とみなします。実際、超音波ドプラー法で骨盤腔内血流の停滞を証明した報告もあります。したがって、前立腺肥大症による会陰部の不快感、夜間頻尿などには駆瘀血剤である当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桂枝茯苓丸、やや便秘気味の例には桃核承気湯、大黄牡丹皮湯が有効とされます。

 八味地黄丸などで胃腸障害を来したり、あまり前立腺が腫れていないのに残尿感など多彩な症状を示す例で糖尿病がある場合には、四君子湯をベースにした清心蓮子飲がよいとされます。

 その他、食欲低下に伴う体力低下に補中益気湯が、残尿があり、膀胱の炎症が長引いた例には猪苓湯や猪苓湯合四物湯が有効であったとされています。

 6. 男性更年期s001med_023

 男性更年期の西洋医学的治療としては低下した男性ホルモンの補充療法が考えられ、注射剤としてエナント酸テストステロン、内服薬としてアリキル化製剤などがあります。ただし、注射剤は以前は保険適応の問題があり、また前立腺癌発生促進のリスクが増すかどうかについての結論は出ていません。一方、内服薬は吸収も悪く、肝機能障害の危険性もあり、実際にはほとんど使用されません。精神・神経症状については、ストレスに耐えうる自律神経を調える目的で、生活指導としての運動療法やリラクゼーション法が行われています。薬物療法としては抗うつ薬が用いられますが、長期服用、有害作用、有効性を総合して考えると、漢方治療の有用性も高いと考えられます。

 漢方医学では、男性更年期は生殖機能が低下した腎虚の状態であると考え、これに生体エネルギーの源となる気の不足が伴っていると考えます。また、老化によって瘀血が生じ、同時に前立腺肥大症や膀胱機能の低下によって水毒が起こります。さらに基礎体力の低下から消化吸収機能、免疫機能、精神活動などのすべてが低下する脾虚が起こり得ます。

  • 男性更年期の漢方医学的概念
     腎虚:生殖機能の低下
     瘀血:血流のうっ滞
     水毒:水分の停滞
     脾虚:精神活動の低下、体力の低下

 腎虚には通常、補腎剤の八味地黄丸、牛車腎気丸などが用いられます。これらの有害作用として、地黄による胃腸障害と一種のアレルギー反応とも思われる蕁麻疹があり、注意が必要です。

 脾虚には補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯が用いられます。補中益気湯は、体力低下に精神的落ち込みである気虚が加味されている例に適しており、消化器症状や内臓下垂体質に向いています。十全大補湯は、体力低下に加えて貧血気味を表す血虚がある例に有効といわれます。人参養栄湯は体力低下があって、特に手足の冷えがある例に有用とされます。

 ストレスによる精神・神経症状を標的にする場合、気逆タイプのイライラ型には柴胡加竜骨牡蛎湯がよいとされます。不安型には桂枝加竜骨牡蛎湯が、気うつタイプで抑うつ傾向のある神経質な例には半夏厚朴湯が有効であるといわれています。さらに、不眠があってイライラする例には抑肝散加陳皮半夏が、健忘のある例には加味帰脾湯がよいとされます。

 その他、勃起障害には八味地黄丸や牛車腎気丸が、精神的要素の強い勃起障害には柴胡加竜骨牡蛎湯や桂枝加竜骨牡蛎湯が用いられます。

 ほてりや瘀血を思わせる症状には駆瘀血剤である当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桂枝茯苓丸、やや便秘気味の例には桃核承気湯、大黄牡丹皮湯が有効とされます。

7. 尿路結石

 芍薬甘草湯は尿管弛緩や拡張作用、猪苓湯は消炎、利尿作用、大建中湯は消化管だけではなく尿管にも作用し排石に効果を示します。猪苓湯単独もしくは芍薬甘草湯や大建中湯との併用がよく行われます。

8. 血尿

 顕微鏡的血尿には猪苓湯や猪苓湯合四物湯が頻用されます。

 

泌尿器科で扱う主な漢方製剤

症状 製剤名
残尿感がある 下腹部が重い 猪苓湯、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散竜胆瀉肝湯
尿の回数が多い 牛車腎気丸、清心蓮子飲
尿の出が悪い 八味地黄丸、六味丸
元気が出ない 補中益気湯、柴胡加竜骨牡蠣湯
食欲がない 十全大補湯、人参湯


漢方薬の副作用について

 「漢方薬は安全で副作用がない」と思われているかたが多いようですが、漢方薬も薬ですから副作用はあります。ただし、西洋薬と比べれば程度も軽く頻度も少ない場合がほとんどです。

 「証」に合わない薬を飲めば、胃腸障害などが起きることがあります。また、天然物のソバや牛乳にアレルギーがあるかたがいるのと同じように、体質によっては、服用中に異変が起こるかたもいます。

 主な副作用として、食欲がなくなる、熱やじんましんが出る、むくみ、動悸、不眠、血圧が上がる…などがありますが、ごくまれに間質性肺炎などの重篤な副作用もありますので、おかしいなと思ったら、すぐに医師や薬剤師に相談してください。

漢方薬の健康保険について

 現在日本では148種類の漢方エキス製剤(うち軟膏が1種類)が健康保険の適応となっており、多くの病気や症状に対応できます。

 特に高齢者の病気や、生活習慣病などの慢性疾患、婦人科疾患などに広く使われています。

 ただし、漢方を専門にしている医療機関の一部では、保険がきかない自由診療(自費診療)をしているところもありますので、はじめに聞いておくとよいでしょう。当院では健康保険で処方可能です。

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泌尿器科症状における漢方薬、まとめ

頻尿桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、加味逍遙散、当帰芍薬散小柴胡湯、柴苓湯などの柴胡剤。

 特に更年期障害に伴う頻尿:加味逍遙散、当帰芍薬散

 冷え症での頻尿:人参湯

腹圧性尿失禁補中益気湯(体力増強、骨盤底筋群増強作用)、清心蓮子飲(胃弱で神経質な例)

切迫性尿失禁猪苓湯合芍薬甘草湯(膀胱炎などに有効な猪苓湯と抗痙攣作用のある芍薬甘草湯の合方。特に芍薬が膀胱の不随意収縮に有効)

 喉のつかえ感を訴える神経質な例:半夏厚朴湯合八味地黄丸

 腰の冷えが強い:苓姜朮甘湯

 前立腺肥大症などで下半身の衰え:補腎薬の八味地黄丸、牛車腎気丸を併用。

切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁が併発:それぞれに有効な漢方薬を組み合わせる。

反射性尿失禁八味地黄丸、牛車腎気丸

 

反復性膀胱炎、慢性膀胱炎

 再発を繰り返す(再発防止)、ごく軽い炎症:猪苓湯、猪苓湯合四物湯(利尿効果と消炎効果、検尿で軽度の血尿を示す例にはより有効)

 下腹部の愁訴:清心蓮子飲(胃弱にもよい、糖尿病にも推奨)

 牛車腎気丸五苓散(尿路の難治性炎症)    

尿路不定愁訴八味地黄丸、牛車腎気丸。加味帰脾湯。柴苓湯。清心蓮子飲

 冷え、のぼせ:加味逍遙散。貧血気味:当帰芍薬散

前立腺肥大症八味地黄丸、牛車腎気丸

 会陰部の不快感、夜間頻尿:駆瘀血剤である当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桂枝茯苓丸、やや便秘気味の例には桃核承気湯、大黄牡丹皮湯

 清心蓮子飲(八味地黄丸などで胃腸障害や、前立腺の腫大がないのに残尿感など多彩な症状を示す、糖尿病)。

 食欲低下に伴う体力低下:補中益気湯、残尿があり膀胱の炎症が長引いた例:猪苓湯、猪苓湯合四物湯

男性更年期

 腎虚(生殖機能の低下):補腎剤の八味地黄丸、牛車腎気丸

 脾虚(精神活動の低下、体力の低下):

  補中益気湯(体力低下に精神的落ち込みである気虚が重なり、消化器症状や内臓下垂に有効)

  十全大補湯(体力低下に加え、貧血気味を表す血虚がある例に有効)

  人参養栄湯(体力低下に加え、手足の冷えがある例に有用。食欲不振・フレイル、筋量減少、高齢者・虚弱者に

 精神・神経症状を標的:

  気逆タイプのイライラ型:柴胡加竜骨牡蛎湯

  不安型:桂枝加竜骨牡蛎湯

  気うつタイプで抑うつ傾向のある神経質な例:半夏厚朴湯

  不眠がありイライラする例:抑肝散加陳皮半夏

  健忘のある例:味帰脾湯

 勃起障害:八味地黄丸、牛車腎気丸

  精神的要素の強い勃起障害:柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯

 ほてりや瘀血を思わせる症状:駆瘀血剤である当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桂枝茯苓丸、やや便秘気味の例には桃核承気湯、大黄牡丹皮湯

 更年期障害(男女とも)に用いる3大処方(実証→虚証):hot flashには桂枝茯苓丸、メンタルには加味逍遙散、冷え性・虚弱・貧血には当帰芍薬散

高齢者で体力や免疫力、食欲が低下(体力の増強を図るために補脾剤または補気剤):補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯

尿路結石の排出促進芍薬甘草湯猪苓湯を併用。

 芍薬甘草湯(尿管弛緩や拡張作用)、猪苓湯(消炎、利尿作用)、大建中湯(消化管だけではなく尿管にも作用し排石に効果)。

 猪苓湯単独もしくは芍薬甘草湯や大建中湯との併用。

体外衝撃波結石破砕術で砂状になった結石の排出促進猪苓湯合四物湯

男性不妊症補中益気湯などの補気剤

顕微鏡的血尿猪苓湯、猪苓湯合四物湯

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