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腎臓がん

腎臓がん

腎臓がんは、尿をつくる尿細管細胞から発生する癌です。腎臓がんは、小さいうちはあまり症状がないため、以前は早期発見が難しく、大きくなって、血尿がでたり、痛みがでたり、患者さん自身がお腹の腫瘤に気づくまで発見できませんでした。しかし、最近では人間ドックでの超音波検査の普及や、他の病気でCTがとられる機会が増え、小さい段階で見つかるようになってきました。このような段階で見つかった場合は転移がみられることはまれです。しかし、時間の経過とともに、腫瘍は次第に大きくなり、リンパ節や肺や骨などの他の臓器に転移をおこすことがあります。肺転移が起きると咳、痰、血痰がでたりしますし、骨転移が起きると痛みや手足のしびれがでたりします。

また、多発することも腎臓がんの特徴です。つまり、ある腎臓に検査で1個の腎臓がんが見つかったときに、その腎臓の他の一見正常そうに見える部分にも画像検査では見つからない小さながんが隠れていることがあります。これを衛星病変と呼びます。直径4cm以上の大きながんでは約10-20%にみられるとの報告もありますが、小さな腎臓がんでも皆無ではありません。
また、手術時にがんのなかった反対側の腎臓に、のちに腎臓がんができる割合は1-2%あります。

腎臓がんの原因は?

腎臓がんの原因は、特殊な腎臓がんを除いて正確にはまだ分かっていません。今のところ、腎臓がんの発生を予防することはできません。治療の事を考えると、とにかく早期発見に努めるしかありません。

腎臓がんの診断方法は?

診断は、主にMRI、CT、超音波診断、血管造影などの画像診断機器を組み合わせて行われます。これらによってあなたのからだの中の血管や組織の情報を得ます。より鮮明な血管像、組織像を得るために、造影剤の注射を同時に行うこともあります。これらの検査により、組織の写り具合、腫瘍の発生部位、大きさをみます。MRI、CT、超音波診断における得られた画像の濃度をみる事で、腫瘍が腎臓がんなのか、良性の腫瘤なのかを区別します。より侵襲性が少なく、より多くの情報が得られる方法が選ばれます。また特殊な検査として、骨に転移があるかどうかみるために、骨シンチという検査が行われます。

超音波検査

プローブと呼ばれる小さな機械を直接お腹や背中にあて、発した無痛性の音波が臓器で反射してきたものを処理することにより、モニタ画面で臓器の映像をみることができます。がんの部分は、正常部分とは異なる光り方で見えます。この検査はもっとも手軽で、もっとも身体に負担の少ない検査といえます。

CT検査

X線とコンピューターを組み合わせた診断装置。造影剤を用いない単純撮影法もありますが、一般的には造影剤を腕や足の静脈から点滴注射し、臓器、血管の染まり具合と尿中に排泄される造影剤により腎像、尿管、膀胱などの形を指標とし診断します。目的とした臓器にあわせ、連続的にX線写真を撮影し、コンピューターにより画像が作られます。比較的容易に検査でき、診断精度の高い検査ですが、造影剤にアレルギーがある人もいますし、またX線の被爆が多少あります。

MRI検査

磁力を用いて身体の成分の反応をコンピューターで解析してフィルム上にあらわす画像検査の一種です。X線を用いたCTとよく似ていますが、血管などの軟らかい組織が骨などの硬い組織と同じくらいよく観察できます。診断精度の高い検査で、X線の被爆がなく、多少腎機能が悪くても造影検査できる利点がありますが、身体のなかに金属が入っている人は行えません。過去に心臓のペースメーカー手術、手足の金属埋込み手術などの体内に金属を埋め込むような手術を受けた方は、必ず放射線科医、泌尿器科医に伝えてください。

血管造影

造影剤を用いて、動脈や静脈などの血管の走行を調べるレントゲン検査。局所麻酔を行ったうえで、足の付け根を小さく切開し、カテーテルとよばれる細い管を血管に進めて、造影剤を必要な血管内に送り込みます。麻酔が必要であり身体に負担をかけるやや侵襲的な検査ですが、手術をするにあたり血管の走行や異常を知ることができる点で大事な検査であるといえます。最近は、CTなどの他の検査法が進歩したため、それらの検査で情報が不十分な場合に必要に応じて行われます。

骨シンチ検査

骨に転移があるかどうかみるために、弱い放射性物質を静脈注射し、その4-5時間後に写真をとる検査。危険性や身体への負担はほとんどありません。

 

腎臓がんに対する治療は?

腎臓がんの治療の根幹は手術療法です。他の臓器のがんでは、放射線療法や抗がん剤治療が有効な場合がありますが、腎臓がんでは特殊な場合を除いてあまり有効ではありません。肺などに転移がみられた場合は、分子標的薬という薬を使います。

腎全摘術

最も古くから行われている方法で、がんにおかされている腎臓全体をその周囲にある脂肪組織、副腎ごと完全に摘出する方法です。術中に血管内に腫瘍をばらまいたり、腫瘍を周囲に取り残さないように、腫瘍を術者の目で直接みることなく、腎臓の血管を先にしばった上で、周囲組織ごと腎臓を摘出します。大血管周囲にあるリンパ節も一塊として摘出されます。

この手術の利点は、

  1. 少なくとも1側腎臓全体をとるため、その腎臓からの再発の心配がない。
    →ただし、遠隔転移がおこることを完全には防げません。
  2. 古くから行われている方法であり、手技が確実である。
  3. 治療成績も確実であり、小さい偶然発見されたものでは、5年生存できる確率が90%以上とされている。すなわち、5年後に100人中90人以上の患者さんが生存しています。

しかし、欠点として、腎臓が1個になるため、将来、

  1. 特に高血圧や糖尿病のある人、高齢の方では腎機能が低下する可能性がある。
    →これについては、問題ないとする意見もあります。
  2. 残った反対側の腎臓にがんができる確率が少ないながらあり(1-2%)、その手術が大変である。
  3. 交通事故や怪我で残った腎臓が傷つくと、腎不全となり血液透析が必要になる。
  4. 結果的に良性の腫瘍だった場合、全部取らなくてもよい腎臓を1つまるごと失ってしまい、患者さんの不利益になる。
    →もちろん、そうならないように慎重に診断しています

小径腎腫瘍に対する腎部分切除術

腫瘍が小さいうちに偶然発見される腎臓がん(小径腎がんとよばれます)が増えるにしたがい、近年中心に行われるようになってきた方法で、血管の走行や腫瘍の位置に注意を払い、腎臓がんの部分だけを摘出し、正常の腎臓部分を温存する手術です。当初は、腎臓が1個しかない患者さんや、腎機能が悪い患者さんにできた腎臓がんのみで行われてきましたが、①近年の研究で腎全摘術と治療効果(制がん性と表現されます)に差がないことが示され、②腎機能の温存により、将来的に心筋梗塞などの心血管系イベントのリスクが下がる可能性も示され、腎機能に問題ない患者さんに対しても積極的に行われるようになりました。腫瘍の大きさが4cm以下の場合には、原則、部分切除術を積極的にお勧めしております。連携施設の千葉大学でも、腹腔鏡下腎部分切除術における症例の蓄積の後、現在はロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術が積極的に行われております。

また、腫瘍の部位によっては4-7cmの場合にも部分切除術が施行できる場合もあります。

この手術の利点としては

  1. 腎臓が2個残るので、腎機能低下に対する心配が少ない。将来的な心血管イベントの抑制に働く可能性がある。
  2. 手術で切らなかった対側の腎臓にがんができても、手術による切除が可能になる。

などがあげられます。

しかし、欠点として、

  1. 手術された側の腎臓で腎臓癌が再発することがありうる。この点については、CT等により注意深く経過観察する必要があります。
  2. 手術手技は確立されていますが、腎全摘除術より難しい手術です。血管の多い腎の途中で切断するため、術後2週間は出血や尿が漏れる可能性があります。特に仮性動脈瘤とよばれる合併症では、血尿を生じ緊急の処置を要する可能性があります。
  3. また、大きさが4cm以下であっても、発生部位によっては部分切除が無理なことがありますし、術中の出血や腫瘍の状態によっては腎全摘術に変更せざるをえない場合があります。

小径腎腫瘍に対する手術術式の決定(例:ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術か、あるいは開腹手術での腎部分切除術が安全か?など)においては、患者さんと医師で十分なディスカッションののち、決定される必要があります。

 

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