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精巣腫瘍(精巣がん)

精巣にも悪性腫瘍が発生します。精巣は精子を形成する胚細胞から成るために、悪性であっても医学的には精巣がんと呼ばず、精巣腫瘍といいます。精巣腫瘍の種類には、胚細胞 から発生する胚細胞腫瘍、血液疾患である悪性リンパ腫、特殊な悪性腫瘍である肉腫 などがあります。

通常は 痛みを伴わないで精巣が腫れてくることで発見されます。

早期診断・早期治療が大事!
年齢的に働き盛りの人が多いこと、陰部であり羞恥心があることなどを理由に かなり進行した状態ではじめて来院されるケースもまれではありません。しかし ながら、早期に発見し、早期に治療すれば予後のよい病気ですから、早めに受診 されることをお勧めします。

症状

無痛性陰嚢内腫瘤(腫れ、しこり)が典型的な症状ですが、炎症や出血を伴うと痛みを生じることがあります。ゆっくりと大きくなる事が多いです。

精巣腫瘍の診断と治療

精巣腫瘍は触診と超音波検査で診断され、手術により精巣を摘出します。

局所:原発巣

  • 触診(陰嚢を触って診察する)でおおよそ分かります。
  • 超音波エコー検査で陰嚢内精巣部分のしこりを確認します。

全身:転移巣

  • レントゲン検査(胸部単純)、CTスキャンやMRIなどの画像検査が、肺や腹部リンパ節(後腹膜リンパ節)などの転移巣の診断に有用です。

腫瘍マーカー

  • 精巣腫瘍(胚細胞腫瘍)のタイプによっては血液中の腫瘍マーカーが 上昇することがあり、診断や治療効果の判定に用いられます。血液検査で腫瘍マーカー(HCG-β、AFP、LDH)を測定します。上記の診察、検査に加え、これらの腫瘍マーカーが高値を示すとほぼ精巣腫瘍という診断がつきます。AFPは卵黄嚢腫瘍、胎児性癌、未熟奇形種で産生されます。hCGは絨毛癌のすべて、胎児性癌、セミノーマの一部で産生されます。LDHは精巣腫瘍以外の悪性腫瘍や様々な病態で異常値となるため診断的特異度は低いですが、腫瘍の活動性を示す良いマーカーとなります。

進行する スピードが早いので、手術が先行されます。摘出された精巣は病理検査によって どのようなタイプの腫瘍かを診断します。リンパ節や肺、その他の臓器に転移している可能性があるので、CT検査などで転移の有無を調べます。以下の病期(ステージ)によって 手術後の治療方針が決定されます。

臨床病期分類(日本泌尿器科学会分類)
ステージ1:腫瘍は精巣のみで転移を認めない。
ステージ2:横隔膜より下のリンパ節に転移がある。
ステージ3:リンパ節以外の臓器に転移を認める。

一般的に転移し易い悪性腫瘍であり、リンパ行性及び血行性転移が主な転移様式です。転移し易い部位には、後腹膜リンパ節、肺、肝臓が挙げられます。又、セミノーマ以外の精巣腫瘍はセミノーマよりも高率に転移を伴います。

組織型

  • セミノーマ(精上皮腫)  (35〜50%と最も多い組織型です)
  • 精母細胞性セミノーマ
  • 胎児性癌
  • 卵黄嚢腫瘍
  • 絨毛癌
  • 奇形腫
  • 上記の混合型

これまで調べた疫学的データは以下の通りです。

比較的稀ですが、15-35歳男性では最も多い悪性腫瘍で、最も治癒率の高い充実性腫瘍の1つです。

有効な診断技術、腫瘍マーカーの進歩、有効な多剤併用抗がん剤治療、外科治療により、死亡率は1970年までの50%以上から1996年には10%以下まで低下しています。

治療に成功する原因としては、

  • 放射線治療や種種の抗がん剤に高感受性の胚細胞起源であること、
  • 組織学的により良性成分への分化能が高いこと、
  • 早い増殖、予測可能な全身増殖様式、
  • 合併症の少ない若年に好発し集学的治療に耐えうること、

によるとされます。

性腺外胚細胞種の予後は、同じ治療でも原発性胚細胞種の半分といわれます。

原発性精巣悪性腫瘍の90-95%は胚細胞成分起源で、非胚細胞成分起源は5%です。

セミノーマ40%、胎児性癌20-25%、奇形癌25-30%、奇形種5-10%、純絨毛癌1%、混合型15%の頻度です。

精巣への転移性腫瘍は稀ですが、細網内皮系腫瘍の精巣浸潤は起こりうるといわれます。

ピークは20-40歳で、60歳以上や0-10歳の幼児にも発生します。

若年成人で最も多く、20-34歳男性では最多の、35-40歳では2番目に多い充実性腫瘍です。

セミノーマは10歳以下や60歳以上では稀ですが、35-39歳では最も多い組織型です。

精子細胞性セミノーマ(セミノーマの10%)は50歳以上で最多です。

胎児性癌、奇形癌は主に25-35歳に発生します。

絨毛癌(胚細胞腫瘍の1-2%)は20-30歳代により多いとされます。

卵黄嚢腫瘍は幼児、小児に多いです、若年成人では他の胚細胞成分と混合して見られることが多いです。

良性の純奇形種は小児で最多ですが、成人では他の成分と混合して見られることが多いです。

精巣悪性リンパ腫は主に50歳以上の男性に見られます。

両側精巣腫瘍の2-3%は、遺伝的要因の可能性があります。

2-3%は両側性とされ、両側セミノーマが最多で48%、両側同様の非セミノーマが15%、異なる胚細胞性腫瘍が15%、同様の非胚細胞性腫瘍が22%、といわれます。

両側腫瘍の半数が片側、両側の停留精巣の既往を持つことは、片側下降異常に両側異形成が多いのと同様です。

精巣腫瘍の7-10%は停留精巣の既往を持つとされます。

停留精巣の頻度は、新生児4.3%、幼小児0.8%、18歳以上の成人0.7%であり、

停留精巣から精巣腫瘍発生の相対リスクは3-14倍とされます。

停留精巣の既往患者の5-10%が、対側正常下降精巣に悪性腫瘍を発生するともいわれます。

両側停留精巣で精巣腫瘍の既往患者の25%が、第2胚細胞腫瘍のリスクがあるといわれます。

ホルモンの関与が示唆されており、妊娠マウスへのエストロゲン投与により精巣の下降異常、異発生が起こるといわれ、

ジエチルスティルベストロールや経口避妊薬を投与された女性からの男児にも同様の所見がみられたという報告があります。

外因性エストロゲン投与はライディッヒ細胞腫発生とも関連するともいわれます。

ジエチルスティルベストロール投与女性からの男児での、精巣腫瘍の相対リスクは2.8-5.3%とされます。

精巣萎縮との関連も示唆され、非特異的、あるいはムンプス性の精巣萎縮は、局所的ホルモンバランス異常により精巣がんを発生するともいわれます。

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