メニュー

小児の泌尿器科疾患についての質問

Q. 停留精巣(停留睾丸)について教えてください。

精巣は、胎児期に腹腔内で形成され、出生の2か月前ごろより次第に陰嚢へ降りてきます。停留精巣は、この精巣が陰嚢に降りる過程が途中で停止したか、または降りる過程の中途であることが考えられます。

停留精巣の多くは、出生後の数カ月で自然に精巣が陰嚢内に降りて正常になります。しかし、その後も停留精巣の状態が続く場合は、手術によって精巣を陰嚢内に固定する必要があります。

Q. 停留精巣の症状はどんなものですか?

停留精巣では、陰嚢内に精巣を触れないこと以外に特別な症状はありません。停留精巣は乳児検診で見つかることがほとんどです。精巣は正常でも容易に鼠径部に挙がってしまうため、乳児が泣いたりして診察がしづらい場合は注意が必要です。そのため停留精巣が疑わしい場合は、日を変えるなどして何度か診察する必要があります。

Q. 停留精巣の原因はありますか?

停留精巣の発生原因は、ホルモンバランスの異常や精巣導帯(精巣を陰嚢内に固定している靭帯)の異常等が言われていますが確かな原因は現状では不明です。遺伝的要因や母体要因、環境要因などが、胎児期のホルモン産生や神経系の成育、体の成育に影響を与え、停留精巣になると考えられています。

Q. 停留精巣になる危険因子はありますか?

停留精巣には鼠径部や陰嚢内の他の異常(鼠径ヘルニアや精巣上体の付着異常等)やホルモンバランスの異常(視床下部・脳下垂体・精巣のホルモン環境が精巣の下降に必要と言われています。ただし停留精巣の患者さんが必ずしもこのホルモン異常を受診時に伴っているわけではありません)や、尿道の異常(尿道下裂等)などを伴うこともあります。低体重児と未熟児で、新生児における停留精巣の発生率が上昇することが知られています。その他、家族に停留精巣を認めた場合もその発生頻度は高くなるとされています。また母親がアルコールやタバコを摂取した場合も発生率が高くなるとされています。

Q. 停留精巣の合併症について教えてください。

停留精巣を治療せずに放置した場合、精巣がんと不妊症のリスクが高くなることが知られています。

  • 精巣がん:停留精巣の4%が腫瘍化するといわれ、全胚細胞腫瘍の10%は停留精巣より発生します。停留精巣は正常の10〜35倍の腫瘍発生リスクを有し、鼠径管内は1%、腹腔内は5%のリスクといわれています。5歳までに固定術をすれば腫瘍発生は稀、10歳までに固定術をすれば腫瘍発生のリスクを大いに軽減するとされ、思春期以後の固定術はリスク軽減に全く影響しないため、摘除すべきといわれています。しかし、腫瘍の早期発見・早期治療につながるよう、精巣を触れやすい陰嚢内に固定しておくことは大切です。1歳以後は自然下降しないので、1歳を過ぎたら診断つき次第手術をすべきとされます。停留精巣の腫瘍発生平均年齢は40歳であり、長期の経過観察が必要です。思春期を過ぎたら精巣の自己チェック、マーカ−採取が重要です。詳しくはこちら
  • 不妊症:精子が発育するのに適した温度環境は、37℃近くあるおなかの中よりも低い温度である陰嚢内が最適と考えられており、精巣がおなか近くにとどまったままの状態では、男性不妊症の原因になるといわれています。停留精巣の場合、精巣の温度が上昇するため、精子の産生が低下し不妊症となります。

Q. 停留精巣の検査には何がありますか?

陰嚢内に精巣を触れず停留精巣を疑う場合、以下の検査で精巣の正確な位置を診断します。

  •  超音波検査
  •  MRI検査
  • 腹腔鏡検査:鼠径部に精巣を認めない場合、腹腔内に精巣がある疑いがあるため、内視鏡で腹腔内を検査します。

Q. 停留精巣の治療について教えてください。

停留精巣と診断され、生後6カ月までに改善されない場合、手術で精巣を陰嚢内に固定する手術(精巣固定術)を行います。この理由は、停留精巣の多くは6カ月以内に自然治癒し、6カ月以降には自然治癒することが少ないためです。また停留精巣の治療は、精巣がんや不妊症の発生リスクをなるべく低くするため生後15か月までに行うほうがいいとされています。

腹腔内停留精巣はMRI等で検索しても確実ではないことが多く、全身麻酔下に腹腔鏡にて精巣の有無、発育の状態を観察し、状況に応じて、①観察のみ、②腹腔鏡下に精巣摘出、③腹腔鏡下に精巣固定、④腹腔鏡下に精巣血管を結紮し後日精巣固定を行う2期的手術、を行います。②のように、精巣が未熟でその後の機能が期待できなければ、固定せずに摘出する場合もあります。

Q. 陰嚢内に精巣を触れたり触れなかったりするのですが・・・?

陰嚢内に精巣は降りてはいるが、陰嚢への固定が不十分で挙がりやすい移動精巣という病態があります。停留精巣との鑑別が時に難しい場合がありますので、専門とする泌尿器科の受診をお勧めいたします。2歳以降で陰嚢内に精巣を触れたり触れなかったりする場合があります。精巣につながる精巣挙筋という筋肉が収縮することにより、精巣がときどき挙上する状態のことを指します。これは正常な反応であり、このような筋肉反射は小学生まで続きます。本人がリラックスしているときに陰嚢内に左右同じ大きさの精巣を触れるのであれば停留精巣ではなく、原則的には治療の必要はありません。

停留精巣は注意して診察しないと分かりにくいものです。乳児検診で停留精巣が疑われた場合は、できるだけ早い時期に泌尿器専門施設で正確な診断を受けるようにしてください。生後6カ月以降は自然下降する可能性が低くなり手術治療が必要となりますので、適切な時期に適切な治療を受けることが肝要となります。停留精巣について詳しくはこちら

Q. 陰嚢が腫れていることに気付きました。痛みはないようですが・・・?

陰嚢水腫(水瘤)が考えられます。腹腔内の液体が、細く開存した鞘状突起を通って精巣鞘膜腔内に流入し、精巣のまわりに貯留した状態です。小児期の水腫は鼠径ヘルニアと同じ原因により、鞘状突起が太ければヘルニアとなります。交通性の場合、早朝は小さいですが夕方以降に大きくなります。

成人の陰嚢水腫に対して行われる穿刺吸引は、小児には行うべきではありません。穿刺直後の再貯留、患児に与える精神的苦痛、発熱・血腫形成・ヘルニア併発時の合併症、などがあり、治療が必要な場合には根治術を行うべきです。絶対的な手術適応となるのは、ヘルニアを合併している症例です。交通性で大きな水腫や緊満した水腫、自然消失を期待できない症例などがそれに準ずる手術適応です。

Q. 男の子で、おちんちんの先が赤く腫れて痛がっているのですが・・・?

特におちんちんの皮の先が赤くなる事が多く、悪化すると全体が赤く腫れ上がってしまいます。そうなるとおしっこをするときも痛がる様になってしまいます。この状態を亀頭包皮炎(きとうほうひえん)といいます。

Q. どうして亀頭包皮炎が起こってしまうのですか?

男の子のおちんちんの皮を少し剥いてみてください。その時に、おちんちんの先がどれくらい見えますか?小さいうちは全部剥ける子供は少ないのです。亀頭包皮炎を起こしやすいのは、皮を剥こうとしたときに先端が1mm程度の隙間でしか亀頭部位が見えない場合が多いです。この時はおしっこが亀頭と皮の間に残りやすく、炎症を起こしやすくなってしまいます。原因菌の多くは不潔で湿気の多い環境を好みます。包茎ペニスの包皮の中は、こうした条件がそろっているというわけです。

Q. 亀頭包皮炎を起こした時はどうすれば良いのでしょうか?

炎症が強い時は抗生剤の内服や軟膏を塗ってもらいます。そうすると2,3日で痛み、腫れも落ち着いてきます。包茎が強い事で亀頭包皮炎を起こしやすい場合には、早めに皮が剥ける様にしてあげることで炎症が起こらなくなります。治療には弱めのステロイド軟膏を1日2回程度、朝と夜の入浴後に軟膏を塗りながら少しずつ皮を剥いていきます。お母さんはどうやっていいのかわかりにくいので、お父さんに協力してもらうとやりやすいですよ。

お子さんのおちんちんの状態で、包茎が強めかどうかわからない時は相談してください。大きくなると子供も恥ずかしくなり、お母さんにも言いにくくなります。小さいうちの方が対処しやすいかもしれませんね。

Q. ふだんから、親にできることはありますか?

子供たちのペニスを亀頭包皮炎から守るためには、親によるケアが不可欠です。まず、日ごろからペニスを不用意に触らないように教えましょう。幼いうちから癖になっていると、後からの矯正が難しくなります。気づき次第注意するようにしてください。

少しずつ皮をむいていき包茎を治してあげるのも、亀頭包皮炎の予防となります。一気にむくのは負担となりますので、徐々にむいていくようにしましょう。主に育児を担当するのはお母さんかと思いますが、ペニスの問題となるとお父さんの助けが必要です。ご夫婦で協力しあい、お子様のペニスを守ってください。

もし、亀頭包皮炎と思しき症状が現れたら、無理をせずわれわれの助けを求めてください。当院は子供たちの亀頭包皮炎にも対処します。お気軽にご相談ください。亀頭包皮炎について詳しくはこちら

Q. こどもの包茎について教えて下さい。

包茎とはおちんちんの先端の包皮口が狭いために包皮をむいて亀頭を完全に露出できない状態をいいます。

生まれてきた男の赤ちゃんは包茎の状態が正常です。もし亀頭部全体が包皮でおおわれていないような場合は、むしろ尿道下裂などの先天性のおちんちんの異常を疑う必要があります。男児が出生した時、亀頭は包皮で完全に覆われ、さらに亀頭表面と包皮の内側はぴったりとくっ付いて剥がれない状態です。この時期は包皮の出口(包皮輪)もきつく、あまり伸びないことが一般的です。これが乳児期から幼児期にかけて、亀頭表面と包皮内側の間に脱落した細胞や分泌物が垢として溜まり(恥垢と呼ばれ、白い塊として透けて見えることがあります)、隙間ができるようになって剥がれてきます。学童期にはぴったりとくっ付いていた亀頭と包皮がしっかり剥がれ、さらに時々起こる勃起現象によってきつかった包皮輪も少しずつ引き伸ばされるようになります。
この時期の包皮輪の口径や伸展性には個人差があり、よく伸びるようになっていれば普段は亀頭が包皮に覆われていても、包皮を陰茎の根元に押し下げれば亀頭がしっかり露出するようになります。このようになっていれば亀頭の表面もしっかり洗えるので清潔が保たれます。しかしながら、包皮輪の伸びが不十分で亀頭を露出することができないと、亀頭と包皮の間が不衛生なままとなったり、尿の飛びに影響が出たりと健康上の問題が生じることがあります。
第二次性徴の時期に入ると、男性ホルモンが活発化することにより亀頭や陰茎が急速に発達し、包皮も軟らかく伸びやすくなります。普段でも亀頭先端が次第に露出されるようになります。さらに思春期後期以降は、最終的に勃起をしていない時でも亀頭が露出した状態となります。
したがって以上のような自然経過を考えると、少なくとも思春期までの包茎は病的なものではないのです。包皮がむけない状態がいつ頃まで続くのかはこどもによって様々ですが、生殖器が急激に成長する思春期(12才から15才頃)までは包皮を完全にむいて下げることが出来ない男児は少なくありません。したがって包皮がむけないという理由だけでは、こどものときに手術や特別な治療は不要です。

Q. こどもの包茎では、どんなことが問題になりますか?

  • 排尿時の包皮のふくらみ

    包皮口が狭いと排尿時におちんちんの先端が風船状にふくらむことがあります(バルーニング現象)。そのためおしっこがあらぬ方向に飛び散りトイレを汚して困るということはありますが、それ自体で尿の出が悪くなって健康状態に影響するようなことは起こりません。

  • 亀頭包皮炎

    3才前後よりおちんちんの先端が赤く腫れて痛がる、ということを男の子は経験することが少なくありません。陰茎は赤く腫れ上がり、膿が出たり排尿する時の痛みを伴うようになります。これは包皮先端の炎症で亀頭包皮炎と呼びます。このような炎症は短期間の抗菌薬の内服や塗り薬でよくなります。何度も繰り返す場合を除けば包茎の治療は必要ありません。ただし、これは不潔な手で触ることなどの要因もありますので、外出後の手洗いを徹底することも重要です。

  • 恥垢(ちこう)

    こどものおちんちんをよく見てみると、包皮の下に黄色い脂肪のかたまりのようなものが透けて見えることがあります。これは皮膚の表面の新陳代謝によりできた垢であり恥垢と呼びます。これにより自然と包皮と亀頭表面の分離が進み、むけやすくなります。通常この垢には細菌はついていません。成長と共に包皮がむけてくると自然に排出されるので、特別な処置は必要ありません。

  • 尿路感染

    研究論文のなかには、生まれたときに環状切除術を受けている男の子の方が受けていない包茎の男の子より乳児期(特に6ヶ月以下)の尿路感染(おしっこに細菌がはいって腎臓や膀胱で炎症を起こす病気)の頻度が低いと報告しているものがあります。しかし尿路感染に関しては衛生環境の影響も多い上、1歳以上では男児の尿路感染はきわめて少なくなり手術の利点はないと考えられています。

Q. こどもの包茎は治療する必要がありますか?

小児期の包茎は決して病的なものではありませんので、基本的に治療は不要です。しかしながら、包皮輪がきつ過ぎると健康上の問題が生じることがあり、そのような場合に限って治療を行うことが一般的となっています。

Q. こどもの包茎を治療する場合、どのように行うのですか?

包茎に対する治療は、以前では手術を行うのが一般的でした。しかしながら、最近では軟膏を塗って包皮輪を伸ばす治療が広く行われるようになり、良好な治療成績が医学論文で報告されています。

1.軟膏塗布治療

きつい包皮輪にステロイドホルモン含有軟膏を一日2回塗ってその伸展性を改善させる方法です。4~8週間継続すると80~90%以上のお子さんで包皮が剥け亀頭が露出できるようになります。ステロイド剤はコラーゲンの合成を低下させ皮膚を薄くする作用や炎症を抑える作用により包皮の伸展性を改善させるとされ、また、全身への副作用はないことが示されています。

さらに、包皮をやさしく陰茎の根元へと押し下げ、包皮輪に緊張をかけて少しずつ伸ばす包皮伸展訓練を同時に行うとさらに効果的となります。ただし、やみくもに無理に行うと包皮の出血や亀裂を生じ、後に包皮が硬くなったり嵌頓包茎を引き起こすことがありますので専門医から十分な指導を受けて下さい。

当院では軟膏(リンデロンVG軟膏)を塗布した包皮翻転(ほんてん)指導をおこなっています。包皮をずり下げてむけなくなる狭い部分に少量のステロイドの入った軟膏を朝晩2回薄く塗ります。最初は包皮表面から少量の出血を伴う場合があります。一定期間以上(少なくとも2週間以上)継続する必要があります。

この方法でむけるようになる頻度は高いのですが、むけた後にやめてしまうとまたむけなくなります。毎日お風呂や排尿時に包皮をむく習慣をつけさせてください。一度スムースに剥けるようになった後は軟膏を塗る必要はありません。

最も気をつけなければならない点は、包皮がむけて亀頭が露出できたあとは必ず包皮をもとに戻しておくことです。包皮がむけて亀頭がツルンとでてくるとあわててしまい、むいた包皮を戻さないと皮膚がむくんできて戻らなくなります。亀頭が手前でしめられた形となり腫れ上り大変痛がります。このような状態を嵌頓(かんとん)包茎と呼びます。そうなると泣き叫んで痛がるこどもを連れて救急外来を受診するようなことになりかねません。むくことの出来た包皮は必ずもとに戻せますからあわてず、ゆっくり戻してください。

2.手術治療

包皮輪を含めた余剰な包皮をリング状に切除する環状切除術が一般的に行われます。確かに亀頭を露出させるという目的においては確実な治療方法ですが、自制の困難な小児期には全身麻酔が必要となりますし、頻度は少ないものの尿道の損傷など合併症の可能性もあります。ここで切除される余剰に見える包皮部分には最も鋭敏な感覚をつかさどる組織が含まれているので、将来の性感覚への影響も懸念されます。

したがって最近では、手術治療は、閉塞性乾燥性包皮炎という包皮輪が非常に硬く軟膏塗布療法では全く効果のないようなお子さんに限定して行われるようになっています。

閉塞性乾燥性包皮炎について

亀頭包皮炎を繰り返したり、無理な包皮剥離後や包茎手術後に包皮輪が白色に瘢痕化してしまうことがあります。これを閉塞性乾燥性包皮炎といいます。閉塞性乾燥性包皮炎になってしまうと、ステロイド軟膏などで包皮を翻転することが難しくなります。このような場合には手術治療をお勧めします。

 

Q. おねしょ(夜尿症)について教えてください。

赤ちゃんは、昼夜の区別なくおしっこをしまが、成長につれおしっこを膀胱に溜められる量が増えていき、夜のおしっこが減っていき、おねしょが無くなってきます。小学校入学までには、9割前後のお子さんがおねしょをしなくなります。

小学校入学以降でも、おねしょが続く症状を夜尿症といい、医療機関での受診をお勧めします。

Q. おねしょの原因はなんですか?

夜尿症のおもな原因は下記とされています。

  • 抗利尿ホルモンと呼ばれる、排尿を制限するホルモンが十分に機能していない
  • 膀胱の容量が小さくおしっこを溜めていられない
  • 生活のリズムが乱れている
  • 心理的なストレス

Q. おねしょ(夜尿症)が治らないのですが・・・?

 子どものおねしょ(夜尿症)は、「5歳を過ぎて1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3か月以上つづくもの」と定義されます。7歳児における夜尿症の有病率(病気をもっている人の割合)は10%程度とされ、その後は年間15%ずつ自然に治るとされますが、0.5~数%は夜尿が解消しないまま成人に移行するといわれています。生活指導をはじめとする治療介入により、自然経過に比べて治癒率を2~3倍、高めることができ、治癒までの期間が短縮するといわれています。

 小学校に入っても夜尿症が治らない場合は、小児科あるいは泌尿器科を受診することをお勧めします。夜尿症患児は夜尿のない対象のお子様と比較して、有意に自尊心が低いとの報告もあり、夜尿症が改善したお子様では自尊心の回復が見られたとの海外の報告もあります。

 夜尿症は親の育て方や子どもの性格の問題ではありません。夜寝ている間の尿量が膀胱(ぼうこう)に貯められる尿量より多いと、夜尿症につながります。

夜尿症は、

①睡眠中に膀胱がいっぱいになっても、尿意で目をさますことができないという覚醒障害を基礎としています。

この覚醒障害に加えて、

②膀胱の働きが未熟である(膀胱の容量が小さい、ある程度膀胱に尿が溜まると膀胱が勝手に収縮してしまう、など)

③夜間尿量が異常に多い(夜間多尿)

などいくつかの原因が複合して発生します。
 昼間の最大1回排尿量(mL)を計り、これを体重(kg)で割った値が5mL/kg以下なら、膀胱容量の少ない膀胱型の夜尿症が疑われます。もし、トイレが近い、トイレまで間に合わなくて尿をもらすという昼間の症状があれば、尿を貯める膀胱の働きが明らかに未熟である可能性が高くなります。突然の尿意切迫感や、トイレまで間に合わなくて尿をもらすという昼間の症状がある状態は、『過活動膀胱』と呼ばれます。

 夜間尿量が多いかどうかを知るためには、実際の夜間尿量を測ります。夜尿の量はおむつの重さの変化(使用後のおむつの重さから使用前のおむつの重さを差し引いた量)でわかります。夜尿量と起床時の排尿量を加えたものが夜間尿量で、

標準的な夜間尿量=「 体重(kg)× 睡眠時間(時間)×0.9 」(mL)が、

6~9歳では200ml以上、

10歳以上であれば250ml以上

であれば、夜間多尿型の夜尿症が疑われます。

一般に、夜尿症児の1/3は膀胱型1/3は夜間多尿型残りの1/3は膀胱型と夜間多尿型の両要素をあわせもつ混合型です。

Q. おねしょ、夜尿症の治療はありますか?

夜尿症は成長とともに、改善していきます。小学校を卒業するくらいになるとほとんどが改善されますが、成人になっても続く場合もあります。やはり専門の医療機関で早期に治療することは有効です。

 夜尿症の原因を調べ、原因に応じた治療法を提示します。生活指導や行動療法を開始し、効果が乏しい場合には夜尿アラームや内服治療を追加します。夜尿を回避するために就寝後の決まった時間にお子様を起こされる保護者の方がおられますが、短期的な効果を示唆する報告は散見される一方、長期的な効果に関しては結論は出ていないようです。

 内服薬としては夜間尿量を減少させる効果のある薬剤を就眠直前に使用します(抗利尿ホルモン療法)。抗利尿ホルモン剤については従来わが国においては点鼻薬しかありませんでしたが近年、口腔内崩壊錠が使用可能となり服用しやすくなりました。抗利尿ホルモン療法を行う場合には、就眠前2時間以内の厳重な水分制限が必要となります。アラーム療法や抗利尿ホルモン剤で改善を認めないお子様には膀胱の緊張を緩和して膀胱容量を増加させる作用のある薬剤(抗コリン薬)を投与することがあります

 頑固な便秘は、膀胱容量を小さくする可能性があるため、便秘をしないように留意して下さい。味が濃い食事をとると、水分を多く取ってしまいますので、夜間多尿型では塩分コントロールも大切です。

当院では、投薬などを利用しながら、お子様にあった治療を行っていますので、是非お早めにご相談ください。

 

Q. 膀胱尿管逆流症について教えてください。

Q:膀胱尿管逆流症とはどういうものなのですか?
膀胱内のおしっこが膀胱に充満しているとき、または排尿時に尿管・腎盂・さらには腎実質内に逆流する現象です。
Q:なにか原因はあるのですか?
腎臓で濾過されて作られたおしっこは尿管をとおり膀胱へと流れ込みます。この尿管から膀胱へ入る「膀胱尿管接合部」のところには逆流防止機能があるのですが、
  • 粘膜下尿管の長さ
  • 尿管口の形態と位置

の異常により機能が弱くなってしまい起こります。

Q:先天的なものなのですか?
先天的に形成不全により発生している症例もありますが、神経因性膀胱や、尿道狭窄等による通過障害が起こってしまうこともあります。
Q:症状は何かありますか?
最も多い症状は尿路感染症です。高熱と側背部痛などの腎盂腎炎症状が最も多いです。また、頻尿、排尿時痛などの膀胱炎の症状を呈して来院される方もいます。
また、消化管症状として発症することもあり、嘔吐、食欲不振、体重減少等を主訴にこられることもあります。
また学校検診で蛋白尿・白血球尿としてみつかるときもあり症状としてはさまざまです。
Q:検査は何をするの?
尿検査で白血球尿が検出されれば尿路感染症との診断がつけられます。
膀胱尿管逆流症の程度を調べるのには
  • 膀胱造影(おしっこの管を入れ造影剤を流し込む)
  • MRIやMRU(MRIの泌尿器系をみるもの)

逆流していると腎臓にダメージを起こすことがあるので

  • 核医学検査(DMSA DTPA)

を行います。

Q:治療はどうするの?
程度の軽いものに関しては成人になるにあたり自然に消失・改善が見られるものもあります。
しかし程度が悪くなればなるほど自然治癒は難しくなるため、手術をして逆流を止めてあげないといけません。
Q:手術はしないといけないの?
そういう場合もあります。逆流が続くことにより腎実質にダメージを起こしてしまい、腎臓が働かなくなってしまうことがあります。そうなると人工透析等をしないといけなくなりますから、きちんと検査し適切なタイミングで手術を考えないといけません。
Q:手術は何をするの?
人工的に膀胱尿管接合部を作り変えてあげる手術をします。膀胱内に入っている尿管をくりぬき、膀胱の粘膜の下にトンネルを掘ってあげてそこの尿管を縫い付けるという手術をします。
この手術は「尿管の長さ」「尿管口の位置」を変更してあげることにより逆流防止機能を高めてあげるということを目的にしています。
また、程度の軽いものに関しては、「内視鏡下手術」というものも最近行われております。
Q:手術したら大丈夫なの?
逆流はしにくくなりますが、年に数回は検査をしないといけません。また暫くしてから再発してしまうことや、尿管口の狭窄が起こってしまったりするからです。きちんと定期的に外来通院し適切な時期に検査を受けてください。
膀胱尿管逆流症について詳しくはこちら
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME