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女性の排尿障害とは

尿失禁

尿をしたいと思わないのに尿が出てしまう状態。
咳やくしゃみなど腹圧がかかったときに尿がもれる「腹圧性尿失禁」と、急に強い尿意がでてそれと同時もしくは尿意に引き続いて尿がもれる「切迫性尿失禁」の二つが代表的な尿失禁です。どちらか一つの場合もありますが、両方が同時に存在する「混合性尿失禁」の場合もあります。

  • 診断

    初診時に尿検査を行ったあと、お話を聞いて診断し、場合によっては内診をしたり、超音波検査や尿流量検査などを行うこともあります。腹圧性尿失禁の場合には膀胱造影や膀胱内圧測定検査を行ったり、パッドテストという検査を行うこともあります。

  • 治療

    腹圧性尿失禁の場合は症状の強さや日常生活の障害の度合いに応じて異なりますが、骨盤底筋体操、行動療法、内服治療、手術(TVTスリング手術、TOTスリング手術)などがあります。切迫性尿失禁の場合は骨盤底筋体操、行動療法、内服治療などを行います。混合性尿失禁の場合は症状に応じて上記の治療を組み合わせます。

頻尿

尿の回数が多い状態。通常日中であれば8回以上、夜間は2回以上あれば頻尿といえますが尿量は水分の摂取量などによりかわりますので、たくさん水分を取っている場合にはこの限りではありません。
頻尿以外に「尿意切迫感」(急激におこる強い尿意)や「尿失禁」があったり、頻尿により日常生活が障害されている場合には治療を行います。

  • 診断

    初診時に尿検査を行ったあと、お話を聞いて診断し、場合によっては内診をしたり、エコー検査や尿流量検査などを行うこともあります。ご自宅でまる1日の排尿時間、1回ごとの尿量、尿もれの有無、摂取した水分量を記録していただく、排尿日誌をつけていただくこともあります。

  • 治療

    行動療法、内服治療などを行います。

過活動膀胱

「尿意切迫感(突然現れる強い尿意)を主症状とし、頻尿あるいは切迫性尿失禁をともなう自覚症状を特徴とする症状症候群」と定義されています。尿が近くて、トイレにいきたくなると我慢できない、または、尿にいきたくなるともれてしまう方はこの病気の可能性があります。

40歳以上の15%程度にこのような症状があり、70歳以上では男女とも3人に1人は過活動膀胱との報告もあり、加齢に伴い患者さんの数は増加します。その治療は内服治療が中心です。詳しくはこちら。

最近は、過活動膀胱に対する新薬が相次いで発売され、多くの方がそれらの薬剤の恩恵を受けています。詳しくはこちら。また、通常の内服治療を行っても十分効果が得られない重症の方には、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法という新しい治療の取り組みも始められています。

  • 診断

    初診時に尿検査を行ったあと、お話を聞いて診断し、場合によっては内診をしたり、エコー検査や尿流量検査などを行うこともあります。ご自宅でまる1日の排尿時間、1回ごとの尿量、尿もれの有無、摂取した水分量を記録していただく、排尿日誌をつけていただくこともあります。

  • 治療

    行動療法、内服治療などを行います。

過活動膀胱の症状

尿意切迫感 急に起こる、がまんできない尿意
昼間の頻尿 日中の頻尿(回数はとくに決められていない)
夜間の頻尿 トイレのために夜、1回以上起きる
切迫性尿失禁 抑えきれない尿意が起こると同時に、尿がもれてしまう

 一方、尿もれは、自分の意志とは関係なく尿がもれてしまう現象で、尿失禁とも言います。原因によっていくつかのタイプに分かれますが、下記の表のほかにも薬の影響などによって尿漏れが起こる場合があります。ちなみに、女性に多いのは腹圧性尿失禁です。

尿もれのタイプ

タイプ症状原因
切迫性尿失禁 尿意を催した途端にもれてしまう、あるいはトイレに間に合わずにもれてしまう 膀胱炎、尿路結石、過活動膀胱など
腹圧性尿失禁 くしゃみや咳をした時、重い荷物を持った時など、おなかに力が入ったときに尿がもれる 骨盤底筋や尿道括約筋のゆるみ

頻尿・尿もれの薬物治療、非薬物治療

 頻尿の治療は、感染症があるときは抗菌剤で感染を抑えます。また、排尿は自律神経のはたらきに支配されており、副交感神経から出るアセチルコリンという物質が関係しているため、この物質のはたらきを抑える薬「抗コリン薬」を用いて治療にあたることもあります。ただ、抗コリン薬は閉塞隅角緑内障の人には用いることができないうえ、のどの渇き、ふらつき、便秘などの副作用が5〜20%程度出現するという問題があります。また異常な膀胱収縮を抑えると同時に正常な膀胱の収縮を抑えてしまうことから、尿が出にくくなる尿閉という合併症も1%未満ですが、出現する可能性があります。漢方による治療もあり、当院では患者さんの状態に合わせた治療を行っています。漢方治療についての詳細はこちら
 尿漏れに対しても、抗コリン薬がよく用いられますが、頻尿と同じように閉塞隅角緑内障の人に対しては使用できず、副作用の注意が必要となります。尿漏れの抗コリン薬以外の治療法としては、β刺激薬などの内服薬、腹圧性尿失禁を予防する体操(骨盤底筋体操と呼ばれています)や、電気・磁気刺激療法、手術療法(TVT手術、TOT手術)などがあります。

 

 

反復性膀胱炎、慢性膀胱炎

 急性膀胱炎の発症後、数日から10日程度の急性期を過ぎても排尿痛、残尿感、頻尿などが残っているもの、また全く自覚症状はないものの、検尿の沈渣で赤血球、白血球が高視野で5~6個以上認められるものを一般に慢性膀胱炎と呼びます。また、尿所見には異常なく、自覚症状のみがある膀胱神経症を慢性膀胱炎に入れる場合もあります。

 膀胱結石、結核といった基礎疾患や便秘などがあれば、まずこれらを治療します。基礎疾患の関与が少ない慢性膀胱炎で、尿培養で有意な細菌数が検出される場合は、急性膀胱炎と同様の治療を行います。それでも治癒せずに長期化した場合は、間欠的抗生物質投与と消炎酵素剤、精神安定剤の投与がよく行われています。慢性膀胱炎に対する漢方治療では、利尿効果と消炎効果を期待して猪苓湯あるいは猪苓湯合四物湯が用いられます。検尿で軽度の血尿を示す例にはより有効ともいわれます。清心蓮子飲は一般に下腹部の愁訴を改善する目的で使用されます。四君子湯がベースになっているので胃弱にもよいとされ、また血糖値を下げる効果もあり、糖尿病にも推奨されています。

 中年以降の女性に多く、冷えがあり免疫機能の低下している場合にみられます。この場合、冷え症の治療をしながら免疫力の向上を考え、下記の処方を併用します。

尿路不定愁訴

 「西洋医学的検査では異常を認めないものの尿路の疾患を思わせる症状のあるもの、および尿路に疾患は認められるものの、その疾患特有の症状以外の症状を呈するもの」を尿路不定愁訴と呼びます。この尿路不定愁訴に該当するものに膀胱炎、尿道症候群、前
立腺炎があります。たとえ西洋医学的検査で異常を認めない場合でも、漢方薬を処方すると良い治療効果が得られることがあります。

 膀胱炎に似た症状を示す不定愁訴として、更年期以降の女性によく見られる頻尿を主体とした膀胱炎様症状(尿道症候群)があります。女性ホルモンの減少で生じるものと考えられ、西洋医学的にはホルモン補充療法が行われることがあります。漢方治療では、冷え、のぼせのある例には加味逍遙散が極めて有効といわれます。さらに貧血気味であれば当帰芍薬散を用います。これらの処方は背景にある冷え症も改善し、ホルモン補充療法による有害作用も認められません。

性器脱

女性の膣から子宮や膀胱、直腸などが下がっておりてくる状態です。とくに1日のうち夕方頃が多く、長時間たっていたり、重いものをもったときなどに下がってくる感じや、お風呂に入ったときに股の間になにか手に触れたりといった症状があります。

  • 診断

    お話をきいたあと、通常は後日、尿をためた状態で内診をさせていただき、診断します。

  • 治療

    ごく軽度で症状がない場合、治療を希望されない場合はそのまま様子をみることもあります。また、手術ではない治療を希望される場合は、婦人科でリングを入れていただくことを勧める場合もあります。ご希望のある方にはメッシュ手術を行っている施設をご紹介します。

間質性膀胱炎

頻尿や尿意を強く感じたり、膀胱不快感や尿がたまると膀胱が痛くなるなどという症状がでる病気です。
まだ原因や根本治療がみつかっておらず、専門医も多くありません。2015年7月にハンナ型間質性膀胱炎は難病に指定されました。

  • 診断

    初診時に尿検査を行ったあと、お話を聞いてこの病気を疑った場合、排尿日誌をつけてきていただいた上で尿流量検査や超音波検査などを行うこともあります。その上で外来で膀胱鏡検査をおこなって診断します。

  • 治療

    行動療法(飲水や食事のアドバイスやリラックスの方法)の指導に加え、内服治療、手術(膀胱水圧拡張術)などを行います。

尿勢低下

女性は尿道が短いことから尿もれが多いことはよく知られていますが、女性でも「なかなか尿が出ない」「尿の勢いが悪い」「残尿感がある」などの症状をお持ちの方もいますし、膀胱の筋力低下(低活動膀胱)、尿道狭窄といった病気が隠れている場合もあります。

  • 診断

    初診時に尿検査を行ったあと、お話を聞いて診断し、場合によっては内診をしたり、超音波検査、尿流量検査や膀胱内圧検査などを行うこともあります。

  • 治療

    原因となる病気によって治療法も異なります。

尿道ポリープ

尿道カルンクルともいわれ、更年期を過ぎた女性にみられることが多い病気です。尿道カルンクルとは、中年以降女性の尿道後壁にできる小豆大くらいの赤色の良性腫瘍です。尿道カルンクルから悪性の尿道がんへ進展することはまずありません。尿道出口の6時方向(肛門よりの側)にでき、大きくなると出血したり、すれて痛んだり、尿がでにくくなることがあります。小さなものは症状がないことが多く、その場合は治療は不要です。

  • 診断

    内診をして診断します。

  • 治療

    出血や痛みがある場合は手術をすることもありますが、内服治療や行動療法(いきむような動作を避ける)で手術をしない場合もあります。

尿道憩室

女性の尿道に憩室とよばれるポケット状の部分ができ、炎症をおこして痛んだり、腫れたりする病気です。
抗生剤で炎症をしずめて様子をみることもありますが、炎症をくり返したり、大きい物では手術を行うこともあります。

神経因性膀胱

先天性の病気や子宮や直腸の手術後、脊柱管狭窄症、脊髄損傷など原因はさまざまですが、膀胱や尿道に関係する神経の障害が原因となって尿意を感じづらくなったり、排尿しにくくなったり、尿失禁がおきたりします。我慢していることで膀胱が固くちぢんだ状態になったり、最終的に腎機能低下がおきることもあります。

  • 診断

    初診時に尿検査を行ったあと、お話をよくきいて診断し、場合によっては超音波検査や尿流量検査を行います。その後膀胱内圧検査を行うこともあります。腎機能低下が疑われる場合には、採血や腎シンチグラフィーを行います。

  • 治療

    膀胱の状態を調べて適切な排尿の方法の指導を行います。

  神経因性膀胱についての詳細はこちら

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