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尿膜管:原始膀胱尖部の胎生期遺残物

胎生期、尖部は臍で尿嚢に合流した状態が続き、18週から膀胱の下降に伴い尖部は次第に管腔状となり、通常20週には閉鎖

成人では膀胱頂部から上方へ腹膜と腹横筋膜との間を走り、両側内側臍索の作る三角形の頂点の高さで、腹膜と腹横筋膜に固着した索状物として終わる(臍までは完全には達しない)

全長は3-10cm、平均5cmで、その7割以上に内経1mmの管腔がある

→膀胱との交通があるのは1/3のみ

径は8-10mm

3層から成り、上皮(最も多いのは移行上皮)、粘膜下層、平滑筋層(膀胱近くで最も厚い)

尿膜管の先天異常→下部尿路通過障害等の基礎病変の治療とともに、根治的には尿膜管の全切除を行う

  • 先天性尿膜管開存(congenital patent urachus)

新生時期、先天性後部尿道弁や膀胱機能障害に合併することが多い

性比は3:1で男児に多い

臍からの常時~間欠的な尿漏出、臍の湿潤、痂皮形成の遅延、肉芽腫形成など、程度は様々

着色水の膀胱内注入、MRI縦断像、排尿時膀胱造影が有用

  • 尿膜管憩室(urachal diverticulum)

小さなものは偶然、検査で見つかることが多い(blind internal sinus)

prune-belly症候群や高度下部尿路閉塞に伴うものは大きく、排尿時にいっそう拡張

頸の細いものでは結石を内包

膀胱鏡や、画像検査で診断

  • 尿膜管嚢腫(urachal cyst)

微細な尿膜管腔が感染などで閉塞し、管腔上皮の脱落、壁の変性により孤立性の嚢腫を形成

二次感染が加わると内部(膀胱)や外部(臍)に瘻孔を形成(alternating urachal sinus)

エコー、エコー下穿刺排液、造影剤注入は診断、治療として有効

  • 臍嚢腫(umbilical cyst)

blind external sinusとも呼ばれ、尿膜管尖部遺残の拡張したもの

臍と瘻孔を形成すると慢性感染巣となる

臍炎や臍腸間膜管遺残との鑑別を要する

尿膜管腫瘍

 腺癌84%(粘液産生型69%、粘液非産生型15%)、扁平上皮癌(SCC) 3%、尿路上皮癌(UC) 3%、肉腫 8%

尿膜管癌

膀胱外に発生する極めて稀な腫瘍、全癌の0.01%、膀胱癌全体の0.17-0.34%

性比は男性が65%とやや多く、68%が41-70歳

尿膜管腔には時に腺性増殖様の細胞集団あり=移行上皮の化生したもの→発癌の母地

腺癌、特に粘液産生型のものが圧倒的に多いが、部分的ないし全体がTCCの例も少なくない

通常腺癌だが、UCやSCCのこともあり、稀に肉腫のこともある

分泌された粘液中に少数の腫瘍細胞が浮遊した膠様癌や、不規則に配列した印鑑細胞の集団など

病理学的診断基準 ①腫瘍は膀胱頂部に存在し、膀胱の他の部位に腺性膀胱炎(cystitis glandularis)や濾胞性膀胱炎(cystitis cystica)が共存しない ②正常な尿路上皮との間に明瞭な境界を保ちつつ深部への浸潤傾向が強い ③尿膜管の遺残が認められる ④周囲へ広がりを見せつつ膀胱壁内に分枝増殖する

原発性膀胱癌との鑑別が困難なことは少なくない

腫瘍と隣接膀胱上皮との間に明瞭な境界があり、腫瘍は正常上皮の下の膀胱壁に存在

腫瘍が上皮に浸潤し膀胱内に広がると、原発性膀胱癌と類似

膀胱前腔に広がることもある

血尿(50-70%)、膀胱刺激症状(40-50%)、疼痛(10-40%)

診断に有力な所見とされる粘液尿(尿沈さ中のムチン)の頻度は腺癌症例の1/4以下

腫瘍の形態は様々で特有の所見はないので、膀胱頂部や前壁に限局性病変を認めるときは常に本症を念頭において検索に当たるべき

臍から血性、粘液性分泌液を見たり、触知可能な腫瘤として粘液瘤を産生することもある

腫瘍の多くは点状石灰化を伴い、膀胱腔内に浸潤した腫瘍は尿中に粘液を分泌

MRI矢状断層像は腫瘍と尿膜管との関係を明らかにし、きわめて有用

消化管からの転移性腺癌との鑑別も含め、経尿道的生検は最終的に必須

初期には症状が出にくいため発見時にはすでに局所浸潤癌であることが多い

局所浸潤傾向が強いので、単なる膀胱部切のみではなく、残存尿膜管、近接する腹直筋後葉、腹膜の一部を含めたen bloc な摘除が必要

膀胱壁内で術前診断より広範に、より深く浸潤しており、膀胱部切後の局所再発率は15-50%

局所浸潤の傾向が強く、術後再発は膀胱、腹壁、Retzius腔、近接腹膜

尿膜管切除を伴う膀胱全摘(小径、高分化尿膜管癌を除いて)

放射線治療、抗がん剤治療は無効

原発性膀胱腺癌よりさらに予後悪く、助かるのは50%、5生率35%

遠隔転移は晩期になるまでみられないが、腸骨、鼠径リンパ節、大網、肝、肺、骨に転移

 

女性化乳房

 男性に乳腺の肥大が起こり、乳房が大きくなるものを女性化乳房と呼んでいます。生理的なものと病的なものがあります。肥満の人でも外見上乳房が肥大しているようにみえますが、これは脂肪の沈着によるもので乳腺の肥大ではありません。

 乳腺の肥大とともに痛みを伴うこともまれではありません。生理的には新生児期、思春期、あるいは高齢者にかなりの頻度でみられます。多くは両側の乳腺にみられますが、片側のみのこともあります。

[原因]

 女性化乳房の大部分は女性ホルモンの男性ホルモンに対する比率が高くなることが大きな原因と考えられています。乳腺の発達にはインスリン、副腎ホルモン、プロラクチンなど多数のホルモンが関与していますが、もっとも重要なのは女性ホルモンであるエストロゲンです。男性の血中にもエストロゲンが存在します。男性ホルモンのテストステロンはアロマターゼという酵素によってエストロゲンに変化します。

 新生児期には母親から由来したエストロゲンによって、また、思春期には増加したテストステロンからエストロゲンがつくられるため男児の女性化乳房が生じます。高齢者では約半数に軽度の女性化乳房がみられます。睾丸(こうがん)=精巣から分泌されるテストステロンが減少することと、アロマターゼ活性が増加することによって起こると思われます。

  • アロマターゼ:アンドロゲンをエストロゲンに変換
  • 17β-hydroxysteroid dehydrogenase (17β-HSD) type 1, 2, 5 

 

 

 

 新生児期や思春期にみられる生理的なものは、一過性で自然に消えていくので治療の必要はありませんが、なかには病的な原因によることもあります。内分泌の病的な原因のものとしては甲状腺機能亢進(こうしん)症症、甲状腺機能低下症、クラインフェルター症候群などの性腺機能低下症、一部の副腎過形成、下垂体プロラクチン産生腫瘍などがあります。そのほか、腎不全、肝硬変などでみられることがあります。

 また性腺ステロイド薬、抗潰瘍薬、血圧降下薬、抗精神病薬など一部の薬剤を服用した場合にも女性化乳房を呈することがあります。

 精巣腫瘍、副腎腫瘍など一部の腫瘍が胎盤性ゴナドトロピンというホルモンを分泌するために女性化乳房を示すことがあります。まれに男性でも乳がんがみられます。

[検査]

 プロラクチン、エストロゲン、遊離テストステロン、ACTH、コルチゾールなどのホルモンや、副腎のDHEA-Sなどをチェックします。ほとんどは思春期の生理的なものですが、精巣腫瘍や、高プロラクチン血症、性ホルモン異常値を伴うものは、精密検査による原因検索が必要です。二次性や内分泌性/腫瘍随伴性を否定でき、思春期に伴うものと判断された場合は、乳腺エコーで問題ないことを確認して、経過をみます。ひどい場合には、形成外科で手術をする場合もあります。

[治療]

 生理的な場合には治療は必要としませんが、痛みが強い場合や乳房が大きく心理的に問題となるようならば、エストロゲンの作用を抑制する薬剤を使用します。薬剤に反応せず、乳房肥大がいちじるしいときには外科的に乳腺組織を除去することもあります。病的な原因による場合は、原因となる病気の治療をおこないます。

 

偽性腸閉塞症 

(日本内視鏡外科学会雑誌 19: 205-210, 2014)

 腸管に機械的な通過障害がないにもかかわらず臨床的に腸閉塞の症状を呈する疾患。

 慢性偽性腸閉塞症(chronic intestinal pseudo-obstruction: CIPOとも呼ばれる。

 急性型はOgilvie症候群とも呼ばれ、腸管に分布する自律神経系の制御が崩れて発症し、腹部手術術後発症の報告が多い。

 CIPOの障害部位は小腸、大腸の他に食道や胃、十二指腸、尿管、膀胱まで及ぶことあり。

  大腸のみに腸閉塞症状が認められる疾患を慢性大腸偽性腸閉塞症(chronic colonic pseudo-obstruction: CCPO)とし、特に原因不明のものを慢性特発性大腸偽性腸閉塞症(chronic idiopathic colonic pseudo-obstruction: CICPと分類した。

 CIPOの診断は厚生労働省研究班から診断基準案が出されており、①慢性の腸閉塞症状の存在、②拡張した腸管の画像所見、③器質的疾患の除外の3点により診断される。

 CIPOは全消化管の運動機能障害であり、治療法は食事療法や薬物療法が中心となる。手術も考慮されるが良好な結果は得られないとする報告がある。

 これに対してCICPは手術が有効であるとされ、手術を受けた90%の症例で症状の改善を認めたとの報告あり。また人工肛門造設のみでは長期的な成績は不良であったとの報告もあり、罹患腸管の完全切除が推奨される。

 

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