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腎臓の病気(腎臓がん,腎腫瘍など)

腎臓とは?

腎臓は、左右1個ずつある臓器で、背骨の両側で腰の高さに位置しています。腎臓では、血液によって運ばれてきた体内の老廃物が濾過され、不必要なものが尿として排泄されます。そのために腎臓には大量の血液が運ばれてきます。

それ以外にも腎臓では血圧を調節する物質を作ったり、ビタミンを活性化したり、血液を増やす物質を作る機能があることが知られています。

腎臓は尿を生成を通じて、体の中にたまった老廃物や余分な水分を外へ出して、血液をきれいにする機能があります。また、赤血球の生産をうながす「エリスロポエチン」やレニン、プロスタグランディン、カリクレイン、キニンなどの血圧を調整するような、ホルモンをつくって分泌しています。

腎臓疾患

腎臓の病気には主に下記のようなものがあります。

  • 急性腎不全
  • 慢性腎不全
  • 腎盂腎炎
  • 急性糸球体腎炎
  • 慢性糸球体腎炎
  • 腎臓癌
  • 腎結石
  • 尿管結石
  • ネフローゼ症候群
  • IgA腎症

腎臓が悪くなった時の症状

  • むくみが出る
  • 尿量が少なくなった
  • 夜間にトイレに行く回数が増えた
  • 尿の回数が増えた
  • だるさが抜けない
  • 貧血による動悸や息切れ、めまいや立ちくらみがでる
  • 発疹がないのに体にかゆみがある

腎臓の病気になると、上記のような症状が現れることがあります。放置しておくと、生命に危険を及ぼす恐れもあります。比較的初期に病気が発見されれば、進行を食い止める治療ができる場合が多いのですが、病状が進行すると、人工透析や移植などの必要が出てきますので、上記にあるような症状が出たら、早めに当院にご相談ください。

腎盂腎炎じんうじんえん 

腎盂腎炎とは

腎臓の主な働きは尿をつくって排泄することです。体内で作られた、たんぱく質の老廃物や有害物質などが血液に含まれて腎臓に運ばれてきます。その血液は「腎動脈」という太い血管によって腎臓に集まり、腎臓の組織の「糸球体」で濾過されて尿細管を通る間に必要な成分を再吸収したり、不必要な成分を排泄しながら濃縮されていきます。その尿は腎杯から腎盂に集められ、尿管、膀胱を経て尿道から体外に排泄されます。

概要

腎盂腎炎とは、腎盂や腎杯、さらに腎臓の髄質が細菌によって炎症を起こしている状態で、膀胱から細菌が逆流することによって引き起こされる、腎盂および腎臓の感染症のことをいいます。適切なタイミングで、適切な治療(抗生剤の投与、補液)を行わなければ、細菌が血液中に侵入し、いわゆる敗血症と呼ばれる生命をも脅かす状態になります。

腎盂とは、腎臓と尿管の接続部分のことです。腎臓で作られた尿を集め、尿管を経由して膀胱へ送り出すはたらきをしており、通常は無菌状態です。腎盂腎炎は、膀胱炎の後に起こることが多く、左右対にある腎臓のうち、片方に起こります。

比較的早く治るものを急性腎盂腎炎、治療に反応しなかったり繰り返したりすることで症状が長く続くものを慢性腎盂腎炎と呼びます。慢性腎盂腎炎は目立った症状がない事も多く、進行すると慢性腎不全に移行することもあるため注意が必要です。

原因

腎盂腎炎は細菌感染によるものであり、もっとも多い病原菌は大腸菌です。

典型的な腎盂腎炎は、膀胱に感染した細菌が、腎臓へ尿感から上行することによって起きます。膀胱炎を起こした後、細菌による炎症が尿管を通して腎盂に波及することで生じます。しかし、膀胱炎を発症すると必ず腎盂腎炎になるわけではありません。腎盂腎炎を併発する場合には、さまざまな誘因があります。その誘因として、下記が挙げられます。

  • 尿路通過障害:結石、腫瘍、前立腺肥大など
  • 尿道カテーテル留置
  • 妊娠
  • 免疫力の低下:糖尿病、ステロイド治療、抗がん剤治療 など
  • 解剖学的異常:馬蹄腎、膀胱尿管逆流症など

急性腎盂腎炎はどの誘因でも起こりえますが、慢性腎盂腎炎は主に解剖学的異常が誘因となります。

症状

急性と慢性で症状は大きく異なります。

急性腎盂腎炎

非常に強い炎症反応が生じ、高熱や悪寒、強い腰痛などが生じます。早期に適切な治療を行わなければ、敗血症に至ることもまれではありません。

また、結石や腫瘍が誘因となっている場合には、尿の量が少なくなったり、血尿がみられたりすることもあります。多くは適切な治療で治り、急性腎不全にならないことも特徴のひとつです。

慢性腎盂腎炎

一般的に自覚症状が少ないのが特徴です。長引く食欲不振や倦怠感があり、徐々に腎臓の機能が低下することで、尿を濃縮する能力が低下し、夜間の多尿や尿の色が薄くなるなどの症状が現れます。自覚症状が少ないため気づかれないことも多く、治療せずにいると慢性腎不全に移行することがあります。

発熱

時に40度近くになる発熱を認めます。

側腹部痛

感染を起こしている腎臓の側の腹部から腰部に痛みが生じます。

頻尿

膀胱尿道炎を原因とするので、頻尿となります。

膿尿

感染した菌による膿が尿に混じ、膿尿となります。

血尿

感染によって尿路から出血し、血尿となります。

危険因子

女性

女性は男性より腎盂腎炎になる頻度が高いことが知られています。その理由は、女性は男性に比べ、尿道が短いため細菌が膀胱内に侵入しやすいことと、女性の尿道は膣や肛門に近接していることが挙げられます。

尿路の閉塞

前立腺肥大症や尿路結石などで、尿路の閉塞のため尿流の低下がある場合は、腎盂腎炎になりやすいことが分かっています。

免疫力の低下

癌や糖尿病、その他免疫力の低下する病気では、感染に弱くなるため腎盂腎炎にかかりやすくなります。また臓器移植後やある種の免疫疾患で、免疫抑制剤を内服している場合も、免疫力の低下から腎盂腎炎の頻度が高くなります。

神経因性膀胱

神経障害によって膀胱の知覚(尿意)や排尿に障害が生じた状態を、神経因性膀胱といい、この場合、残尿が多いため膀胱の慢性感染となりやすく、次いでは腎盂腎炎を惹起しやすくなります。

膀胱留置カテーテル

特に長期間膀胱留置カテーテルを使用することによって、尿路感染が起きやすくなり、不適切な管理では腎盂腎炎を引き起こす場合があります。

膀胱尿管逆流症

膀胱尿管逆流症:先天的に膀胱の尿が尿管から腎に逆流する場合、腎盂腎炎になりやすいです。詳しくは膀胱尿管逆流症を参照してみてください。

検査・診断

腎盂腎炎では、さまざまな検査により診断や治療方針の決定が行われます。

血液検査

炎症反応の程度と腎機能を評価します。また、敗血症が疑われる場合には、血小板や凝固因子などが治療方針を決定するうえで重要な項目となります。

尿検査

尿への細菌や血液の混入、尿中の白血球数などを確認します。また、尿培養検査にて腎盂腎炎の原因菌を特定することが可能であり、抗菌薬の選択に必須の検査となります。異形細胞がみつかった場合、膀胱がんなどを疑うきっかけとなります。

超音波検査

腎臓は、超音波で観察しやすい臓器です。超音波検査は簡便に行える画像検査であり、腎盂腎炎のほとんどで行われます。急性の場合には、腎盂の拡張や尿管の閉塞などを確認することができます。慢性の場合では、腎臓の萎縮や腎杯の拡張などがみられます。

CT検査

腎機能が正常であれば造影剤を用いたCT検査が行われます。腎盂拡張の程度や尿管結石の位置・大きさ、解剖学的異常などを詳しく評価することが可能です。

治療

腎盂腎炎の治療の主体は、抗菌薬の投与です。原因菌に適した抗菌薬の使用が必要ですが、腎臓に効きやすいペニシリン系やセフェム系、ニューキノロン系などが多く使用されます。通常は、発症時のみに使用されますが、乳幼児の繰り返す腎盂腎炎には予防的に抗菌薬を長く服用することもあります。

軽症の腎盂腎炎であれば、外来通院で点滴による抗生剤投与、また内服の抗生剤等で治癒します。しかし、高熱が持続する重症の腎盂腎炎の場合、入院して治療が必要となります。

また、腎盂腎炎の原因として、前述した尿路結石や前立腺肥大症などによる尿路閉塞を伴う場合は、尿路の閉塞をカテーテルなどで解除し、体外へ膿の排除をしなければ治癒しません。

膀胱尿管逆流症などが存在し、たびたび腎盂腎炎を繰り返す場合、腎盂腎炎の発症の防止のため、手術的に膀胱尿管逆流症を治療しなければいけない場合もあります。

その他、結石の排出を促すために点滴が行われたり、痛みに対して鎮痛剤が使用されたりします。また、敗血症などの重篤な合併症が生じた場合には、全身管理を含めた集中治療が行われます。

慢性腎盂腎炎の場合には、長期の抗菌薬療法が基本となります。また、解剖学的異常に対しては手術が行われることが多く、慢性腎不全に移行した場合には人工透析や腎移植が必要となります。

合併症

腎盂腎炎を適切に治療しない場合、以下の合併症が引き起こされます。

腎機能障害

腎臓の感染症によって、腎臓にダメージがおこり腎臓の機能が低下します。たびたび腎盂腎炎を繰り返すと、腎不全となり透析が必要となる場合もあります。

敗血症、菌血症

腎臓は血液から老廃物を濾過し排泄する臓器です。そのため腎臓には豊富に血管が存在するため、重症の腎盂腎炎では細菌が血液に侵入し、敗血症、菌血症と呼ばれる危険な状態になります。

予防

水分摂取

適切な量の水分を摂取することによって、尿量を確保し、侵入した細菌を体外へ洗い流すことが大切です。

排尿を我慢しない

排尿を我慢することによって、侵入した細菌が膀胱内で繁殖しやすくなり膀胱炎を引き起こしやすくなります。そのため長時間、我慢をせず排尿することを心がける必要があります。

性行為の後の排尿

性行為の後は膀胱内に細菌が侵入している確率が高く、そのため性行為の後排尿することによって、膀胱炎を予防することができます。

腎盂腎炎は風邪とは違い、抗生剤投与なしで自然に治癒することはないので、前述した症状が認められる場合は、医療機関を受診して適切な治療を受けるようにしてください。治療のタイミングが遅れると、治療に時間がかかるだけではなく、腎臓のダメージも大きくなるので、腎機能の面からも適切な治療が肝要となります。

 もっと詳しく

 

腎臓がん

腎臓がんは、尿をつくる尿細管細胞から発生する癌です。腎臓がんは、小さいうちはあまり症状がないため、以前は早期発見が難しく、大きくなって、血尿がでたり、痛みがでたり、患者さん自身がお腹の腫瘤に気づくまで発見できませんでした。しかし、最近では人間ドックでの超音波検査の普及や、他の病気でCTがとられる機会が増え、小さい段階で見つかるようになってきました。このような段階で見つかった場合は転移がみられることはまれです。しかし、時間の経過とともに、腫瘍は次第に大きくなり、リンパ節や肺や骨などの他の臓器に転移をおこすことがあります。肺転移が起きると咳、痰、血痰がでたりしますし、骨転移が起きると痛みや手足のしびれがでたりします。

また、多発することも腎臓がんの特徴です。つまり、ある腎臓に検査で1個の腎臓がんが見つかったときに、その腎臓の他の一見正常そうに見える部分にも画像検査では見つからない小さながんが隠れていることがあります。これを衛星病変と呼びます。直径4cm以上の大きながんでは約10-20%にみられるとの報告もありますが、小さな腎臓がんでも皆無ではありません。
また、手術時にがんのなかった反対側の腎臓に、のちに腎臓がんができる割合は1-2%あります。

腎臓がんの原因は?

腎臓がんの原因は、特殊な腎臓がんを除いて正確にはまだ分かっていません。今のところ、腎臓がんの発生を予防することはできません。治療の事を考えると、とにかく早期発見に努めるしかありません。

腎臓がんの診断方法は?

診断は、主にMRI、CT、超音波診断、血管造影などの画像診断機器を組み合わせて行われます。これらによってあなたのからだの中の血管や組織の情報を得ます。より鮮明な血管像、組織像を得るために、造影剤の注射を同時に行うこともあります。これらの検査により、組織の写り具合、腫瘍の発生部位、大きさをみます。MRI、CT、超音波診断における得られた画像の濃度をみる事で、腫瘍が腎臓がんなのか、良性の腫瘤なのかを区別します。より侵襲性が少なく、より多くの情報が得られる方法が選ばれます。また特殊な検査として、骨に転移があるかどうかみるために、骨シンチという検査が行われます。

超音波検査

プローブと呼ばれる小さな機械を直接お腹や背中にあて、発した無痛性の音波が臓器で反射してきたものを処理することにより、モニタ画面で臓器の映像をみることができます。がんの部分は、正常部分とは異なる光り方で見えます。この検査はもっとも手軽で、もっとも身体に負担の少ない検査といえます。

CT検査

X線とコンピューターを組み合わせた診断装置。造影剤を用いない単純撮影法もありますが、一般的には造影剤を腕や足の静脈から点滴注射し、臓器、血管の染まり具合と尿中に排泄される造影剤により腎像、尿管、膀胱などの形を指標とし診断します。目的とした臓器にあわせ、連続的にX線写真を撮影し、コンピューターにより画像が作られます。比較的容易に検査でき、診断精度の高い検査ですが、造影剤にアレルギーがある人もいますし、またX線の被爆が多少あります。

MRI検査

磁力を用いて身体の成分の反応をコンピューターで解析してフィルム上にあらわす画像検査の一種です。X線を用いたCTとよく似ていますが、血管などの軟らかい組織が骨などの硬い組織と同じくらいよく観察できます。診断精度の高い検査で、X線の被爆がなく、多少腎機能が悪くても造影検査できる利点がありますが、身体のなかに金属が入っている人は行えません。過去に心臓のペースメーカー手術、手足の金属埋込み手術などの体内に金属を埋め込むような手術を受けた方は、必ず放射線科医、泌尿器科医に伝えてください。

血管造影

造影剤を用いて、動脈や静脈などの血管の走行を調べるレントゲン検査。局所麻酔を行ったうえで、足の付け根を小さく切開し、カテーテルとよばれる細い管を血管に進めて、造影剤を必要な血管内に送り込みます。麻酔が必要であり身体に負担をかけるやや侵襲的な検査ですが、手術をするにあたり血管の走行や異常を知ることができる点で大事な検査であるといえます。最近は、CTなどの他の検査法が進歩したため、それらの検査で情報が不十分な場合に必要に応じて行われます。

骨シンチ検査

骨に転移があるかどうかみるために、弱い放射性物質を静脈注射し、その4-5時間後に写真をとる検査。危険性や身体への負担はほとんどありません。

 

腎臓がんに対する治療は?

腎臓がんの治療の根幹は手術療法です。他の臓器のがんでは、放射線療法や抗がん剤治療が有効な場合がありますが、腎臓がんでは特殊な場合を除いてあまり有効ではありません。肺などに転移がみられた場合は、分子標的薬という薬を使います。

腎全摘術

最も古くから行われている方法で、がんにおかされている腎臓全体をその周囲にある脂肪組織、副腎ごと完全に摘出する方法です。術中に血管内に腫瘍をばらまいたり、腫瘍を周囲に取り残さないように、腫瘍を術者の目で直接みることなく、腎臓の血管を先にしばった上で、周囲組織ごと腎臓を摘出します。大血管周囲にあるリンパ節も一塊として摘出されます。

この手術の利点は、

  1. 少なくとも1側腎臓全体をとるため、その腎臓からの再発の心配がない。
    →ただし、遠隔転移がおこることを完全には防げません。
  2. 古くから行われている方法であり、手技が確実である。
  3. 治療成績も確実であり、小さい偶然発見されたものでは、5年生存できる確率が90%以上とされている。すなわち、5年後に100人中90人以上の患者さんが生存しています。

しかし、欠点として、腎臓が1個になるため、将来、

  1. 特に高血圧や糖尿病のある人、高齢の方では腎機能が低下する可能性がある。
    →これについては、問題ないとする意見もあります。
  2. 残った反対側の腎臓にがんができる確率が少ないながらあり(1-2%)、その手術が大変である。
  3. 交通事故や怪我で残った腎臓が傷つくと、腎不全となり血液透析が必要になる。
  4. 結果的に良性の腫瘍だった場合、全部取らなくてもよい腎臓を1つまるごと失ってしまい、患者さんの不利益になる。
    →もちろん、そうならないように慎重に診断しています

小径腎腫瘍に対する腎部分切除術

腫瘍が小さいうちに偶然発見される腎臓がん(小径腎がんとよばれます)が増えるにしたがい、近年中心に行われるようになってきた方法で、血管の走行や腫瘍の位置に注意を払い、腎臓がんの部分だけを摘出し、正常の腎臓部分を温存する手術です。当初は、腎臓が1個しかない患者さんや、腎機能が悪い患者さんにできた腎臓がんのみで行われてきましたが、①近年の研究で腎全摘術と治療効果(制がん性と表現されます)に差がないことが示され、②腎機能の温存により、将来的に心筋梗塞などの心血管系イベントのリスクが下がる可能性も示され、腎機能に問題ない患者さんに対しても積極的に行われるようになりました。腫瘍の大きさが4cm以下の場合には、原則、部分切除術を積極的にお勧めしております。連携施設の千葉大学でも、腹腔鏡下腎部分切除術における症例の蓄積の後、現在はロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術が積極的に行われております。

また、腫瘍の部位によっては4-7cmの場合にも部分切除術が施行できる場合もあります。

この手術の利点としては

  1. 腎臓が2個残るので、腎機能低下に対する心配が少ない。将来的な心血管イベントの抑制に働く可能性がある。
  2. 手術で切らなかった対側の腎臓にがんができても、手術による切除が可能になる。

などがあげられます。

しかし、欠点として、

  1. 手術された側の腎臓で腎臓癌が再発することがありうる。この点については、CT等により注意深く経過観察する必要があります。
  2. 手術手技は確立されていますが、腎全摘除術より難しい手術です。血管の多い腎の途中で切断するため、術後2週間は出血や尿が漏れる可能性があります。特に仮性動脈瘤とよばれる合併症では、血尿を生じ緊急の処置を要する可能性があります。
  3. また、大きさが4cm以下であっても、発生部位によっては部分切除が無理なことがありますし、術中の出血や腫瘍の状態によっては腎全摘術に変更せざるをえない場合があります。

小径腎腫瘍に対する手術術式の決定(例:ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術か、あるいは開腹手術での腎部分切除術が安全か?など)においては、患者さんと医師で十分なディスカッションののち、決定される必要があります。

 

 良性の腎腫瘍

腎嚢胞(じん・のうほう)

腎臓内の水のつまった袋状構造です。一種の老化現象と考えられます。完全に良性の病変ですが、まれに大きくなって周囲の組織を圧迫し腰痛を起こす事もあります。それゆえ、医師による定期的な検査が必要です。超音波検査やCT検査で診断可能です。腎臓がんでありながら嚢胞の形をとるものがあり、画像検査では区別できません。そのため、直接細い針を刺して組織や内部の水分を吸い取り、その成分のなかにがん細胞が隠れていないかどうかを調べる事もあります。

 

腎血管筋脂肪腫(じん・けっかん・きん・しぼうしゅ)

血管と筋肉と脂肪からできた腫瘍です。良性ですが、すこしずつ大きくなるため定期的な検査が必要です。時に出血や疼痛をおこすことがあり、腎部分切除術や血管塞栓術が行われます。特徴的な脂肪成分が超音波検査やCT検査でわかれば診断可能ですが、それがないと腎臓がんとの区別が困難な事があります。

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