一部の生殖医療の診療費用(自費診療)
当院では、下記生殖医療の一部疾患、検査に関しては自由診療(自費診療)となっております。
(その他はすべて通常の保険診療です)
下記料金は全て税別となります。
- 勃起不全初診料 4000円(カウンセリング、追加の検査や治療が必要になった場合は別途費用がかかります。) 再診料(2回目以降) 2000円
- 射精障害(膣内射精障害、遅漏、早漏、精液量減少)初診料 4000円(カウンセリング、追加の検査や治療が必要になった場合は別途費用がかかります。) 再診料(2回目以降) 2000円
- 精液検査 5000円
- ブライダルチェック(精液検査、超音波検査、内分泌ホルモン検査、性感染症検査) 35000円 再診料(結果説明)2000円
- ブライダルチェック(血液と尿による性感染症検査) 20000円 再診料(結果説明)2000円
- 超音波検査(上記疾患精査時) 6000円
- 内分泌ホルモン検査(上記疾患精査時) 9000円
- 染色体検査 34000円
- Y染色体微小欠失検査 30000円
- 男性更年期検査(問診、肝・腎機能・脂質・糖代謝・PSA・ホルモン検査) 10,000円
備考
- 男子中枢性性腺機能低下症(特定疾患)の方で転勤、移転に伴い、治療継続のため診療情報提供書ご持参の場合は通常保険診療となります。
- お電話による料金等のお問い合わせは業務進行の支障となるため、一切ご遠慮いただいております。上記の自費料金は目安であり、病態によっては異なってくる場合があります。あらかじめご了承ください。
- 上記料金は予告無しに変更する場合があります。あらかじめご了承ください。
- クレジットカードのお取り扱いは行っておりません。
STD(性行為感染症)の自費での検査について
性感染症(性交渉で感染してしまう危険性のある病気)として、クラミジア・淋菌・梅毒・陰部ヘルペス・エイズ・B型肝炎・C型肝炎が代表的なものです。
症状が無く検査希望の場合、自費での検査となります。
当クリニックでの自費検査の費用を以下にお示しします。
1.尿検査で調べられるもの
クラミジア・淋病
2.血液検査で調べられるもの
梅毒・エイズ(HIV)・B型肝炎・C型肝炎・ヘルペス
以上すべての検査料金 20000円 となります。
希望のものだけの性病検査も可能です。
すべての結果は1週間後にご説明が可能です。(結果説明の日の予約をお取りします。再診料は2000円です。)
●重要●<検査の適切な時期に関して>
淋菌・クラミジアは感染が疑われる日の直後からでも検査が可能です。
梅毒は感染が疑われる日より少なくとも4週以降、正確を期すために可能であれば8週間以降の検査が適当です。
B型肝炎の検査は、感染が疑われる日より約8週後、C型肝炎の検査は、約12週後に検査をするのが適当です。
HIV感染(エイズ)に関しては、正確を期するために感染が疑われる日より少なくとも約8週間以上経過した時点、できれば12週以降での検査が適当です。(抗体ができるまで時間がかかるためです。その間の期間は、感染力はあるため、性行為で人にうつしてしまう可能性があります。)
万一、何らかの感染が疑われた場合は、以後は保険診療として扱い、治療等を開始いたします。
検査希望の場合、特に予約は必要ありません。直接当クリニックにご来院下さい。
受付後、一般的な泌尿器科の問診票の該当欄に〇を付けてお待ちいただくだけです。
ED (勃起不全) 治療に関して
ED外来は自由診療となります。
当クリニックでの診察は以下のようになります。
初回
既往歴や勃起の状態に関して問診票に記入していただきます。
そのあと医師が診察室にお呼びします。
診察は診察室内で患者さまと医師との1対1で行います(看護師は付きません)。
処方薬は診察室内で医師が患者さまに直接手渡しとなります。
2回目以降
初回同様に、診察室内で患者さまと医師の1対1での診察となります。
お薬も診察室内で医師よりの手渡しとなります。
3回目以降
同じ薬の処方希望であれば、簡単な問診と希望錠数を記入していただくことで、受付窓口でお会計と一緒にお薬をお渡しできます。
費用について
初回診察料 4000円(税別)
再診料(2回目以降) 2000円(税別)
*保険診療と併せて受診の方も別に上記診察料はかかります。
お薬の値段(1錠あたりの税別価格)
バイアグラ(25mg) 1500円(税別)
バイアグラ(50mg) 2000円 (税別)
シルデナフィル50mg 1000円(税別) (バイアグラのジェネリック薬品です)
レビトラ(10mg) 1500円(税別) 製造一時停止中のため、現在販売しておりません。
レビトラ(20mg) 2000円(税別) 製造一時停止中のため、現在販売しておりません。
シアリス (10mg) 1500円(税別)
シアリス (20mg) 2000円(税別)
●お支払い例
初診の場合
バイアグラ25mg 5錠をご希望された場合
初回診察料4000円+バイアグラ25mg 5錠(1500円×5)
となり、合計11500円(税別)のお支払いとなります。
(ただし、医師が必要と認めた場合は、精査のため血液検査、レントゲン検査、心電図等の検査を行う場合があります。その場合は、検査内容に応じて追加料金が発生します。通常、心疾患など特別な既往症がなければレントゲン検査、心電図検査は行いません。)
ED(勃起障害:Erectile Dysfunction)について
勃起障害(ED:erectile dysfunction)とは性交を行うに十分な勃起が得られないことをいいます。
性生活の活動性は非常に個人差が大きいものですが、EDの患者さんは20歳代前半から80歳代までの幅広い年齢層に渡っており、その患者数は全国で約900万人と推定されています。50歳以上になると40%以上の方がEDであるとも言われていますし、男性不妊症においても不妊の原因の約20%がEDといわれています。
EDの診断と主な原因とは?
EDは大きく「心因性」と「器質性(神経性、内分泌性、血管性など)」に分けられますが、もっとも多いのは両方に原因がある「混合性のED」です。
1999年にホスホジエステラーゼタイプ5(PDE5)阻害薬(バイアグラ、レビトラなど)が登場すると、EDの診療は治療だけでなく、診断も大きく変わりました。
患者さんが受診されますと、最初に「IIEF5(日本性機能学会監修)」という問診表でEDの程度を評価し、もちろん診察はさせていただきますが、つぎにはPDE5阻害薬を服用できるかをチェックし、問題がなければまずPDE5阻害薬を使ってみていただきます。
PDE5阻害薬で患者さんとパートナーに十分満足が得られる勃起が回復すれば、それ以上の検査は行いません。
ED治療について
ED治療の主なものとしては、
- PDE5阻害薬(バイアグラ、レビトラ)
- プロタグランジンE1の尿道内注入
- 血管作働薬(プロタグランジンE1など)の陰茎海綿体への注射
- バキュームデバイス(陰圧で陰茎を勃起させる補助具)
- 陰茎プロステーシス
などがあげられます。
しかし、現在のED治療で最初に使われるのはPDE5阻害薬であり、(2)以下の治療はPDE5阻害薬が効かないときに試されるものです。
また、昔からEDといえば糖尿病が有名ですが、高脂血症・高血圧などの生活習慣病が基礎疾患としてある場合には、基礎疾患の治療がEDを改善させることが分かっています。
規則正しい生活と適度な運動、身体にいい食事などに心がける事が大切です。
ED治療薬について
現在、わが国で使用可能なED治療薬はバイアグラ、レビトラ、シアリスの3種類で、すべてPDE5(フォスフォジエステラーゼ5)阻害薬です。これらは陰茎の海綿体平滑筋の緊張をゆるめ血流をよくすることで、十分な勃起に導きます。
それぞれのお薬に特徴がありますが、副作用や服用の際の注意点はほぼ同様です。
副作用
- 血管を拡げる作用により、血圧の低下や頭痛、鼻づまり、腹痛、顔面のほてりなどが起こることがありますが、程度は軽いことがほとんどです。
- 通常の服用に際しての血圧低下の程度は軽いものですが、硝酸薬と併用すると重篤な血圧低下をきたすことがあります。
- 持続勃起症(プリアピズム)は、性的な興奮がないのに勃起が長時間持続する状態で痛みを伴います。4時間以上にわたって勃起が続く場合は、持続勃起症が疑われるため、すぐに医師の診断を受けてください。
- 一時的にものが青く見えたり、まぶしいということがあります。網膜色素変性症の患者さんはED治療薬は服用できません。
服用に際しての注意
- ED治療薬をのんでも、性的な刺激がなければ勃起はしません。
- ED治療薬には性欲を増進させる作用はありませんから、やる気がなければ勃起しません。
- ED治療薬は心臓に悪影響をおよぼすことはありませんが、性行為は心臓に負担をかけます。勃起が回復したからといって、張り切り過ぎないようにしましょう。
- 性交渉のだいたい1時間前をめやすに、出来るだけ空腹時に服用しましょう。
ED治療薬
Viagra バイアグラ(50mg錠)
一般名 | クエン酸シルデナフィル製剤 |
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特徴 | のんで1時間くらいして効いてくる、効き目の持続は一晩というところ。食事の後(特に脂っこいもの)に服用すると効き目が弱くなる。 |
Levitra レビトラ(10mg,20mg錠)
製造一時停止中のため、現在販売しておりません。
一般名 | 塩酸バルデナフィル水和物製剤 |
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特徴 | のんでから効果が出てくるまでがバイアグラより少し早い。食後に服用しても効き目に影響ないとされていたが、食後に服用するとやはり効果が減弱するようです。効果の持続はおおよそ一晩。 |
Cialis シアリス(10mg,20mg錠)
一般名 | タダラフィル |
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特徴 | バイアグラ、レビトラと違って効果が36時間くらい持続する、そのため食事と関係なくいつ服用しても良い。 |
ED治療薬と個人輸入について
ED治療薬は医療機関以外の個人輸入で入手したバイアグラ?などは、偽造品の可能性が高く、思わぬ健康被害も予想されます。
また、身体の状態をきちんと把握した上で処方されていないので何か副作用を起こしてもきちんと対処できなかったり、取り返しのつかないことにもなりかねません。
偽造バイアグラや中国製の健康食品などを使われることはある意味、怖いものがあります。
その詳細情報はファイザーのサイトでも詳しく解説されています。
あぶない偽造バイアグラ
https://www.ed-info.net/caution/index.html
最近は個人輸入しても、診察を受けてもほとんど費用は変わりません。大事なお体を壊すような薬の使い方は最終的には大きな損失になります。
インターネットでの購入に際しては、40-50%が偽造品であるという統計があり、成分に血糖降下薬が含まれていて低血糖昏睡から死亡にいたった例もありました。
きちんとした医療機関での処方を心よりお勧め致します。
射精障害について
射精不全は多種多様で、それらを系統的に説明するのは難しいものがあります。
ここでは、患者さんの数が多い、膣内射精障害(不妊症の原因となります)と早漏について解説します。
膣内射精障害
A.マスターベーションでは射精可能だが、膣内では射精できない(狭い意味の膣内射精障害)
(1) ED(勃起不全)がある場合
EDがあるために、膣内に挿入しても射精に至るまで勃起を維持できないものです。EDの治療を行います。
(2) EDがない場合
いわゆる遅漏とよばれる状態です。原因は心因性であることが多いですが、なかには非常に強い刺激でマスターベーションを行ってきたため、女性の膣内程度の刺激では射精に至らないという男性もいらっしゃいます。治療にあたっては、パートナーとの性交渉以外では射精しないこと、性交渉に際して飲酒しないことを守っていただき、
- パートナーの協力による行動療法
- バイブレーターやシャワーを使った刺激
- ヨヒンビンなどの薬物治療
などを行います。強いマスターベーションをやってこられた方は、行動療法で徐々に弱い刺激で射精できるように訓練していきます。
B.マスターベーションでも射精できない
(anejaculation、無射精症)
(1) オルガズムを感じない(anorgasmia、無オルガズム症)
無オルガズム症は原発性と続発性に分けられます。原発性の無オルガズム症の男性は生まれてからずっとオルガズムを経験したことがありません。マスターベーションを試みたこともあまりなく、心因性の原因が多いと考えられています。特に夢精はあるということであれば、心因性であることが強く疑われます。ヨヒンビンなどの薬物とバイブレーターの併用で治療しますが、こういう男性はパートナーに自分と同様に性的なことにあまり興味がない女性を選ぶことが多く、行動療法に際しては積極的な協力が得られない場合もあります。続発性の無オルガズム症は、以前はあったオルガズムを現在は感じなくなってしまったというもので、神経の障害が原因になることが多く、代表的なものには脊髄損傷があります。また、抗精神薬の副作用でオルガズム障害が起きることが知られています。
(2) オルガズムあるいは射精した感じはあるのに精液の射出がない
a.精液が尿道に射出されない(aspermia、無精液症)
専門的にはaspermia(無精液症)あるいはemissionlessと呼ばれますが、精液の尿道への射出に必要な精路(精巣上体-精管-精嚢-前立腺)の収縮が起こらなくなった状況で、オルガズムの後の尿を調べても精子が見られないことで診断されます。交感神経の障害によることがほとんどで脊髄損傷、骨盤内や大動脈の手術の合併症による神経障害、糖尿病などで起こりますが、まれに先天性の内分泌(ホルモン)異常の患者さんでみられることがあります。薬の内服による治療の効果は悲観的です。挙児を希望される場合は、薬物、バイブレーター、電気刺激などで人工的に射精させて精子を得る方法が試みられますが、顕微授精の技術が進歩した現在では、精巣上体や精巣内の精子を回収して顕微授精したほうが良いと考えられる場合もあります。
b.精液が膀胱に逆流している(逆行性射精)
オルガズムを感じた後に尿を出していただき、そのなかに精子が見られれば逆行性射精ということになります。逆行性射精は、射精時に膀胱の出口が閉鎖しないため、精液が膀胱に流れこんでいるものです。糖尿病や骨盤内手術の合併症による神経障害、前立腺手術による膀胱頚部の開大などが原因になります。
治療としては、
- 交感神経を刺激する薬や抗うつ薬などによる薬物療法で精液が外尿道口から出るようにする。
- 挙児をご希望で、膀胱内の精子がうまく回収できれば、その精子を人工授精や体外受精/顕微授精に使用するなどがあります。
※a.無精液症とb.逆行性射精の原因は重なっているものが多く、原因になっている病気が進行して、逆行性射精が無精液症になったり、最初はあったオルガズムがやがて感じられなくなるということもあります。
早漏
早漏を定義することは非常に難しいです。
一般的には膣内に挿入後1分以内に射精してしまうか、あるいは性交渉の半分以上でパートナーを満足させる前に射精してしまう場合とされています。しかし、ストップウォッチを持ってsexするわけではありませんし、パートナーの満足は個人差が大きく、その時々の状況によっても異なります。早漏の原因はほとんどが心因性のものですが、なかにはED(勃起不全)があり、膣内に挿入するまでに非常に強い刺激が加えられているため、挿入するとすぐに射精してしまうということもあります。
治療としては、
- 行動療法(Masters & Johnsonの方法がよく知られています。パートナーの協力が不可欠です)
- 陰茎の感覚を訓練する器具
- 陰茎の感覚を鈍くさせる塗り薬(局所麻酔薬のゼリーなど)
- 抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- EDが原因の場合はEDの治療
などがあります。
AGA(男性型脱毛症:Androgenetic Alopecia)治療について
当院では、プロペシア (万有製薬)の処方などを通じて、AGAの治療をおこなっています。
AGA治療の診察料
AGAは保険適応外疾患(保険診療の対象外)ですので、自由診療となります。
当クリニックでの診察は以下のようになります。
初回
既往歴や頭髪の状態に関して問診票に記入していただきます。
そのあと医師が診察室にお呼びします。
診察は診察室内で患者さまと医師との1対1で行います(看護師は付きません)。
処方薬は診察室内で医師が患者さまに直接手渡しとなります。
2回目以降
初回同様に、診察室内で患者さまと医師の1対1での診察となります。
お薬も診察室内で医師よりの手渡しとなります。
3回目以降
同じ薬の処方希望であれば、簡単な問診と希望錠数を記入していただくことで、お会計時に受付窓口でお薬をお渡しできます。
費用について
初回診察料 4000円(税別)
再診料(2回目以降) 2000円(税別)
*保険診療と併せて受診の方も別に上記診察料はかかります。
処方薬
プロペシア (万有製薬)1ヶ月(1箱)8,000円(税別)
フィナステリド(サワイ)1ヶ月(1箱)7,000円(税別) (プロペシアのジェネリック薬品です)
ザガ―ロ(グラクソ・スミスクライン)1ヶ月(1箱)9,000円(税別)
院内処方で医師から直接薬を渡されますので薬局に行く必要はありません。
プロペシア(フィナステリド)やザガーロを用いたAGA治療薬を服用することで、薄毛の進行を遅らせることができます。なお、どちらも副作用として、リビドー減退や勃起機能不全、肝機能障害などが報告されています。
プロペシアとザガーロの大きな違いは、有効成分です。プロペシアの有効成分は「フィナステリド」であり、ザガーロの有効成分は「デュタステリド」です。どちらの有効成分も、AGAを引き起こす「5αリダクターゼ(5α還元酵素)」と呼ばれる酵素の働きを抑制します。なお、5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、フィナステリドは5αリダクターゼⅡ型の働きを抑制して脱毛の進行を遅らせますが、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方の働きを抑制します。特徴として、デュタステリドの半減期の長さがあげられます。半減期は、血中の有効成分濃度が半分になるまでにかかる期間です。フィナステリドが6時間~8時間程度といわれているのに対し、デュタステリドは2週間程度といわれています。
副作用の発生頻度はどちらも稀ですが、肝機能障害といった重篤な症状も確認されています。そのため、AGA治療を行う際には、まず安全性の高いプロペシア(フィナステリド)を服用して、効果が現れない場合に医師と相談した上でザガーロを服用することが望ましいといえます。
フィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)を用いてAGA治療を受けた場合、効果を実感できるまでには約6カ月の期間が必要です。ただし期間には個人差があり、3カ月程度で効果を実感できることもあります。プロペシアやザガーロを用いたAGA治療が初めての方の場合、治療開始から1カ月後を目処にクリニックで治療効果の確認を行います。確認後、問題ないと医師が判断した場合にのみ服用を続行し、3カ月~4カ月後を目処に再び診察するという流れになります。
性同一性障害(GID)
性同一性障害の診断と治療の流れ
日本精神神経学会が「性同一性障害に対する診断と治療のガイドライン(第3版)」を定めており、それに従った診断・治療が推奨されています。
岡山大学では1999年、精神科医、泌尿器科医、産婦人科医、形成外科医の4診療科が集まり、「岡山大学ジェンダークリニック」として活動が開始され、2000年から正式に性同一性障害に対する診断から手術療法までを含む包括的医療が行われいます。岡山大学病院泌尿器科のホームページはこちら
性同一性障害の診断の流れを示します
精神科医による面接と必要に応じて心理士による心理検査を行い、性の自己意識(つまり心の性)を決定します。また、身体の性については、それぞれ泌尿器科、産婦人科にて、染色体検査、実際に体の診察などを行い、決定します。それらを総合的に判断し、性同一性障害の診断がなされます。
性同一性障害に対する診療は、精神科領域の治療と身体に対する治療の2つに大きく分かれます
まずは精神科領域の治療を行い、この中で性同一性障害の診断の確定、精神的サポート、望む性での実生活体験などが行われます。それでも性の違和感が強く、苦悩が続いている人は身体的な治療を行うことができます。身体的治療の中には、ホルモン療法、乳房切除術、性器に関わる手術(性別適合手術)が含まれます。第3版のガイドラインから、身体的治療はどれから始めてもいいことになっていますが、実際にはホルモン療法から開始し、その後、性別適合手術を行う場合がほとんどです。
泌尿器科では主に男性から女性(Male to Female; MTF)の診断と性別適合手術、女性から男性(Female to Male; FTM)の男性ホルモン療法が行われています。この中で、FTMに対する男性ホルモン療法について詳述します。
男性ホルモン療法は主に注射剤が使用されています。具体的にはエナント酸テストステロンデポ製剤を1回125mgか250mgを2~3週間ごとに筋肉注射します。一般的な効果としては治療を開始してから、数ヶ月で生理がとまり、声が低くなります。体の毛が濃くなり、筋肉もつきやすくなります。その他、陰核の肥大、性欲の亢進を認めます。
FTMに対するホルモン療法の効果 |
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これらの効果は、ホルモン療法を開始して、早くて1ヶ月から6ヶ月ぐらいまでに出現します。ただし、ひげなどの体毛の増加や、体格の変化については個人差があります。副作用としては、多血症、血栓症、体重増加、肝機能障害、脂質代謝異常、重症なニキビなどがあり、定期的な診察、血液検査は必要です。
FTMに対するホルモン療法の副作用 |
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しかし、これまで岡山大学の経験では、現時点では、ホルモン療法を中止しなければならないほどの重篤な副作用を認めた例はほとんどなかったとのことです。
ホルモン療法をうけて3ヶ月毎に1回、効果、副作用についての面接や血液検査を行います。血液検査は血算、肝機能、腎機能、脂質(コレステロール、トリグリセリド、HDLC)、糖代謝、テストステロン、エストラジオールを測定します。そこで問題があれば、適宜、ホルモンの投与量、投与間隔を調節します。
男性ホルモン投与量については、男性の生理的テストステロン濃度(およそ250-1000mg/dl)を保つ程度が適切とされており、多ければよいものではありません。
男性ホルモンを投与する場合に気をつけたい副作用
多血症
男性ホルモンを投与すると血の量が多くなります。基準値よりも高い状態が長期に渡って続くと血管が詰まることがあります。
尿酸値が高くなる(痛風になりやすくなる)
女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンは血清尿酸値を低下させますが、男性ホルモンであるテストステロンは逆に血清尿酸値を上昇させることが明らかになっています。尿酸値の上昇は痛風の原因になるため、男性ホルモンを投与する場合には注意が必要です。
コレステロールが高くなる
血中のコレステロール、脂質が高くなりやすくなります。トリグリセライド、コレステロール、LDLが上昇し、HDL(善玉コレステロール)は低下します。トリグリセライドの異常高値やHDLの値が低すぎることは動脈硬化の原因となるので、こちらも注意が必要です。
男性ホルモンを投与する前に知っておいて欲しいこと
男性ホルモンを投与すると、声が低くなったり、筋肉がつきやすくなって男性らしい体型になってきたりと、一定の変化が生じます。
しかし、女性ホルモン同様、男性ホルモンの投与で生じる変化にも限界はあります。例えば、一度女性らしく膨らんだ胸をホルモンだけで平らにすることはできません。男性ホルモン投与で背が伸びるといったことも残念ながらありません。
男性ホルモンを投与したからといって完全に男性化するわけではない為、ホルモン投与で何が得られるのかを事前にしっかり調べてから、ホルモンを投与するか否か判断された方がいいのではないかと思います。
女性ホルモンも同様ですが、男性ホルモンを投与した場合も肝臓に一定の負担がかかります。副作用の可能性もあります。
FtMで、性別違和を強く感じている場合には男性ホルモンの投与によって本人のクオリティ・オブ・ライフが向上することも多いにあり得るので、ホルモン投与自体は悪いことではありません。
ただ、安易な理由で簡単に男性ホルモンの投与を決めてしまうのは危険なことです。
男性ホルモンを注射などで投与する場合には、ホルモン投与が身体に与える影響をしっかりと考慮した上で、慎重に判断しましょう。
費用について
初回診察料 4000円(税別)
再診料(2回目以降) 2000円(税別)
血液検査(血算、肝機能、腎機能、脂質(コレステロール、トリグリセリド、HDLC)、糖代謝、テストステロン、エストラジオール) 10,000円(税別)
男性ホルモン注射(1回) 5000円(税別)
注射の種類、間隔
エナント酸テストステロンデポ製剤
1回125mgか250mgを、2~3週間ごとに筋肉注射します。