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間欠的自己導尿

適応

尿閉の場合、あるいは多量の残尿が存在し、頻尿、尿失禁、尿路合併症の発生に関与する場合に間欠導尿の適応となります。

器具

カテーテルは1回ずつの使い捨て用カテーテル(例:サフィードネラトンカテーテル8F~10F程度)と、反復使用するカテーテル(例:セルフカテセット女性用・男性用)があります。

  • 使い捨てカテーテルの場合は、1回使用ごとに捨てればよいのですが、反復使用カテーテルは、1ヶ月ごとに新しいセットに交換します。
  • 反復使用カテーテルは導尿用カテーテルと格納容器からなり、導尿しない時は消毒液を満たした格納容器内にカテーテルを入れておきます。導尿時にカテーテルを取りだし、使用した後、水洗後再び容器に収納します。

消毒液・潤滑剤

反復使用カテーテルの収納容器内にいれる消毒液、潤滑剤としては、ベンザルコニウム塩化物添加グリセリン液(0.025%)などを用います。容器内消毒液は、毎日~3日ごとに交換します。

方法

導尿は介護者・看護者が行うことは困難ではなく、1~2回施行すれば容易にできるようになります。また、本人に意欲があり、手指の運動に問題のない場合は、ご自分で導尿操作ができるように指導します(清潔間欠自己導尿)。

間欠的導尿は脊髄損傷時などに生じる神経因性膀胱を代表とする排尿障害を有する患者を対象に行う排尿方法の一つです。尿道を介して膀胱に直接カテーテルを挿入するために適切な方法で実施しなければ粘膜損傷や感染症を引き起こす可能性があります。

手技

①両手を石鹸で使い、水道水で洗います。

②外尿道口とその周囲を消毒綿(クリーンコットン、ナップクリーン、モイスペットなど薬局で市販のもので可)で清拭します。

③カテーテルを取り出し、手指でカテーテルを持ち、外尿道口より膀胱へ、カテーテルから尿が出始めるまで挿入します。

④下腹部を軽く圧迫して、カテーテルから膀胱内の尿を排出します。この際、カテーテルを深く入れたり、浅くしたりしながら、膀胱内の尿を残らず排出します。

自己導尿の場合、女性では外尿道口の位置がご自分ではわかりにくいため、慣れるまでは鏡を用いて外尿道口を見ながら行うように指導します。慣れれば見なくてもできるようになります。

清潔操作に注意を払うことは重要ですが、あくまで滅菌操作ではなく清潔操作の範囲なので、過度に清潔に関して神経質にならないように配慮します。

自排尿は可能であるが、残尿が多い場合については、原則的にはまず排尿し、残尿をカテーテルで除去するという順序をとります。

導尿回数

1日の尿量、膀胱の機能的容量、残尿の程度によります。

膀胱の過伸展をさけるため(膀胱の過伸展は尿路感染の発生や膀胱機能障害の悪化につながります)、膀胱内に400ml以上ためないようにします。頻尿や尿失禁の症状が改善することを目的とすることもありますが、症例ごとに決める必要があり、いちがいにはいえません。一般に一日3回(午前、午後、寝前)より始め、症状の推移、尿量をみながら回数を増減します。

副作用、感染予防

主な副作用は、カテーテル挿入時の尿道痛、不快感、尿路性器感染ですが、いずれも導尿の導入初期に起こりやすいものです。

不安感、不慣れなための不潔操作により起こりますが、通常操作になれるに従い消失します。

十分な説明による不安感、抵抗感の除去、および導入後1週間の抗生剤投与により予防できます。

清潔導尿操作を習得した後は、予防的抗生剤投与は不要です。

清潔間欠的自己導尿(CISC:clean intermittent self-catheterization ) ご指導の実際

自己導尿は、1日に数回、患者さんご自身が尿道からカテーテルを入れて尿を取る方法です。

間欠導尿とは、膀胱容量が500mLを超えないように一定時間ごとに導尿することです。

膀胱内に残尿がなく、膀胱内圧の上昇と過伸展がなければ、膀胱の抵抗力によって尿路感染を防止できるといわれており、無菌的操作ではなく清潔的に自己導尿を行うことが一般的です。

自己導尿指導のステップ

1.自己導尿の導入決定の支援、支援者の確認

 ① 術後排尿障害の症状を確認し、残尿測定を実施した結果を含めた排尿日誌(1~3日間で可)を記載します。

 ② ①を元に導尿回数を設定します。(表1、2)を目安として、患者さんの生活スタイルを加味した時間設定をすることが重要です。

 ③ ご家族にも必要性を理解していただき、協力を得ます。

2.自己導尿する環境の確認(自宅・学校・職場など)

3.必要物品(図1)の選択と準備(カテーテルの種類やサイズの選択)

4.手順の説明(モデルなどを利用し、デモンストレーションします)および実施

5.継続支援(定期受診、評価)

 ① 病医院への定期受診と自己導尿の支援体制の説明を行います。

 ② 経過とともに残尿が減少し、自己導尿の回数を減らしたり、中止できたりする場合もありますが、自己判断で中止しないようお願いいたします。

表 1 自己導尿回数の設定(自排尿の有無)

自排尿がある 尿意、排尿に合わせて導尿
排尿量+導尿量<300mL
自排尿がない 導尿量<300mLになるよう時間設定

表 2 自己導尿回数の設定(残尿量)

残尿量導尿回数備考
200mL以上 5~6回 自排尿があってもないものと考える
100~200mL 2~4回  
50~100mL 1~2回 残尿測定を兼ねて朝・夕などに導尿
50mL以下 自己導尿の終了  

*自己導尿の終了(中止)は、必ず医師の判断を要します。

図 1 自己導尿の必要物品

導尿用カテーテル(再利用型・ディスポーザブル型があります)

再利用型導尿カテーテル

再利用型導尿カテーテル(DIBマイセルフカテーテル[株式会社ディヴインターナショナル])

潤滑剤(ヌルゼリーなど)

清浄綿(クリーンコットン)、軽量カップ

排尿日誌、鏡(*女性の場合、必要に応じて)

間欠的導尿の意義

尿路感染は病院感染において最も頻度の高い感染症です。その原因の多くは留置されたカテーテルによるものであり、4日間以上にわたり開放式カテーテルを留置することで実質的に100%尿路感染症を引き起こすとも言われています1)。閉鎖式留置カテーテルを使用することにより感染のリスクを低下することが期待できますが、閉鎖式であっても留置後10~14日で半数に細菌の定着が見られるため2)、感染のリスクが高い処置と言えます。従って尿道留置カテーテルの使用が適当であるかの評価が必要であり2)、他の排尿方法が可能であれば、できるだけ早期にカテーテルを抜くことが望まれます。排尿障害を有する患者における尿道留置カテーテル以外の排尿方法としては間欠的導尿、膀胱瘻などがあります。その中で間欠的導尿は現時点において最善の方法であると言われています。

間欠的導尿は脊髄損傷、脳血管障害、パーキンソン病、糖尿病などが原因で生じる神経因性膀胱と前立腺肥大症などの器質的な障害による排尿障害に対して適用されます3)。間欠的導尿には患者自身および家族など介助者でも比較的容易に行うことができるという利点がありますが、患者や家族では完全な無菌操作を行うことが困難という側面もあります。しかし、非無菌的な操作であっても定期的に導尿をして膀胱の内圧上昇と過伸展を起こさせないようにすれば尿路感染症のリスクは低下すると言われています4)5)。とはいえ、間歇的導尿の実施期間中に感染症を生じた報告も数多くあり6)7)8)9)10)、その感染率は報告により異なりますが、非無菌的導尿では42.4%、無菌的導尿では28.4%であったとの報告もあります11)。このようなことから間欠的導尿であっても感染のリスクがあるため、不潔なカテーテルを使用することは望ましくなく、適切な保管管理やカテーテル操作の習得が必要であると言えます。

間欠的導尿時の感染対策

膀胱内に過剰量の尿を貯めないことが最も有効な感染対策の手段です12)。導尿回数は1日5~6回程度を目安とし、1回の導尿量は300mL以下にします13)。導尿を行う場合には実施する前に手洗いをし、消毒綿などで陰部を清潔にしてからカテーテルを挿入します。挿入の際には尿道粘膜を損傷させないように潤滑剤を使用し、適切な手技にて残尿のないように行います。使用するカテーテルは使い捨てが望ましく、繰り返し使用する場合には使用毎に洗浄・消毒をします。カテーテルの再処理方法としては、アルコールに5分浸漬する方法14)、塩化ベンザルコニウムやポビドンヨードなどの消毒薬を入れたキット内に保管する方法の他に、カテーテル挿入時に使用する潤滑剤と消毒薬をあらかじめ混合した製剤を使用して保管する方法があります。この方法にはカテーテル挿入前に潤滑剤を塗布する工程が省略できるという利点があります。この場合、使用後のカテーテルは水洗いまたは消毒綿で清拭を行い、消毒薬を含有する潤滑・保存液の入ったキット内に収納します。

消毒薬を含有する潤滑・保存液

カテーテル挿入時の粘膜損傷を予防する目的でグリセリン、オリーブ油、キシロカインゼリーなどの潤滑剤が使用されています。またカテーテル使用後に保管しておくキットの中に消毒薬を入れておく必要がありますが、先に述べた通り、消毒薬と潤滑剤をあらかじめ混合した製剤を使用すると簡便です。消毒薬と混和する潤滑剤としては水溶性であるグリセリンを選択します。グリセリンと混和する消毒薬としては塩化ベンザルコニウムやポビドンヨードなどが使用されていますが15)16)、ポビドンヨードの場合はカテーテルへの影響に注意が必要です。クロルヘキシジンを使用した例もありますが17)、粘膜への使用によるアナフィラキシーショックの報告により、クロルヘキシジンの尿道などの粘膜への使用は禁忌となっています。

キット内の潤滑・保存液の交換は少なくとも2日に1回程度行います18)。交換時にはキット内を温水で洗浄し、十分に水を切った後に新しい液を入れます。定期的な交換をせずに長期間にわたり使用することで微生物汚染を招くことがあります19)。微生物汚染は繰り返し使用による水分の混入によって生じやすくなると思われるため、カテーテルを水で洗浄した後はしっかり水を切ってキット内に保管します。

注意点

間歇的導尿は留置カテーテルよる生活制限がなく、自宅、病院、外出先でも比較的容易に導尿が実施できるため、患者のQOL向上を期待できる方法です。しかしながら、感染症などの合併症を生じる危険性もありますので、患者や家族などに対する適切な導尿方法やカテーテル管理方法などの指導が肝要です。

<参考>

  1. CDC: Guideline for Prevention of Catheter-associated Urinary Tract Infections, 1981. 
  2. 岡田敬司:尿路感染対策.小林寛伊,吉倉廣,荒川宜親,倉辻忠俊編集.エビデンスに基づいた感染制御-第2集- 実践編.メヂカルフレンド社,東京,2003;58-70.
  3. 斉藤正彦、近藤厚生:清潔間欠(自己)導尿法.日本医師会雑誌 1990;103:703-705.
  4. Lapides J, Diokno AC, Silber SJ,et al:Clean, intermittent self-catheterization in the treatment of urinary tract disease. J Urol 1972;107:458-461.
  5. Lapides J, Diokno AC, Lowe BS, et al:Followup on unsterile intermittent self-catheterization. J Urol 1974;111:184-187.
  6. Kochakarn W, Ratana-Olarn K, Lertsithichai P, et al:Follow-up of long-term treatment with clean intermittent catheterization for neurogenic bladder in children. Asian J Surg 2004;27:134-136.
  7. Schlager TA, Dilks S, Trudell J, et al:Bacteriuria in children with neurogenic bladder treated with intermittent catheterization: natural history. J Pediatr 1995;126:490-496. 
  8. Bennett CJ, Young MN, Darrington H:Differences in urinary tract infections in male and female spinal cord injury patients on intermittent catheterization. Paraplegia 1995;33:69-72. 
  9. Wyndaele JJ, Maes D: lean intermittent self-catheterization: a 12-year followup. J Urol 1990;143:906-908. 
  10. 藤本佳則、上野一哉、山田伸一郎 他:清潔間欠導尿法の臨床的検討. 泌尿器科紀要 1994;40:309-313.
  11. Prieto-Fingerhut T, Banovac K, Lynne CM.:A study comparing sterile and nonsterile urethral catheterization in patients with spinal cord injury. Rehabil Nurs 1997;22:299-302.
  12. Wyndaele JJ.:Complications of intermittent catheterization: their prevention and treatment. Spinal Cord 2002;40:536-541. 
  13. 今出陽一郎:在宅自己導尿法.治療 1995;77:73-79.
  14. Bogaert GA, Goeman L, de Ridder D,et al:The physical and antimicrobial effects of microwave heating and alcohol immersion on catheters that are reused for clean intermittent catheterisation. Eur Urol 2004;46:641-646. 
  15. 畑博明、中川晴夫、熊坂公志ほか:自己導尿カテーテル消毒法について~塩化ベンザルコニウム・グリセリン液の消毒効果と潤滑効果について~.医薬ジャーナル 1989;25:71-76.
  16. 岩坪暎二、魚住二郎、安藤三英ほか:自己導尿カテーテル用消毒薬剤の検討.臨床泌尿器科 1987;41:961-964.
  17. 宮崎一興、石堂哲郎、高坂哲:間歇自己導尿セット.臨床泌尿器科 1980;34:663-665.
  18. 尾家重治:在宅医療の感染対策.小林寛伊,吉倉廣,荒川宜親,倉辻忠俊編集.エビデンスに基づいた感染制御-第2集- 実践編.メヂカルフレンド社,東京,2003;97-114. 
  19. Oie S, Kamiya A, Seto T, et al:Microbial contamination of in-use lubricants for non-touch urethral catheters in intermittent self-catheterization. Biol Pharm Bull 2000;23:781-783.
自己導尿のメリット

腎機能を守ります

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自己導尿で規則的に膀胱を空にしてあげれば、腎機能を健康に保つことができます。

膀胱機能の改善も期待できます

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”オシッコをためてから出す”という膀胱本来の運動を再現できるため、膀胱機能の回復が見込めることもあります。

尿路感染のリスクが低いです

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カテーテル挿入時に膀胱に菌が入り込んでしまっても、一定時間ごとに膀胱を空にしてあげれば菌も一緒に排尿されてしまうため、尿路感染症を予防できます。

社会生活への復帰が可能です

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尿道カテーテルを入れっぱなしにしたり、採尿バッグを接続したままの生活とは異なり、自己導尿では身体の動きが妨げられないため職場や学校、旅行等への社会参加も可能です。

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